問題とされた作例
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/06 00:42 UTC 版)
司法省刑事局「生活図版教育関係治安維持法事件資料」(『思想資料パンフレット特輯』第30巻、1941年)には、当時証拠品として押収された絵画のコピーとともに、その絵の問題点について記されている。 雪かきに励む子どもを描いた絵……当時帯広の小学校に勤務していた教師が、学生時代に美術部で描いた。この絵は「小学校に於ける勤労作業場面を描けるものにして児童の意欲的なる表情と姿態は作者の階級意識を如実に現し」ているとされ、罪に問われた。 精米所で働く人々の様子を描いた絵……師範学校の美術部の卒業生が、在学中に描いた。「資本主義社会の下に於いては機械は搾取の道具であるが共産主義社会に在っては機械と人とが真に一体となって働くことが出来るとの作者の意識を此の画面に表現せるもの」とみなされ、罪に問われた。 ポスター「学生よ 農村出身兵士のために 労働奉仕をせよ」……旭川中学校5年生が、熊田の開催した絵画展に出品した。「戦争に依る農村の労力不足を一般に認識せしめ反戦思想を啓蒙するもの」とみなされ、それを展示した行為が罪に問われた。 稲刈り途中で腰を伸ばした農婦を描いたポスター「凶作地の人たちを救おう」……「地主と凶作の桎梏(しっこく)に喘(あえ)ぐ農民を資本主義社会機構より解放せんとする階級思想を啓蒙するもの」とみなされた。 松本五郎のケースでは、授業の様子や放課後の活動など、身の回りの日常を描いた複数の絵画が「犯罪行為」の証拠品として没収された。そのうちの一枚はレコードの鑑賞会の様子を描いた絵であった。NHKの調査では、松本の判決文は破棄されたと見られ、それらの絵の何を問題視されたかは不明である。 裁判では、これらの絵を総括して「プロレタリアートによる社会変革に必要な階級的感情及意欲を培養し昂揚する為の絵画である」(旭川区裁堀口検事)とみなされ有罪となった。
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