商標登録と審決取消請求事件
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/21 00:40 UTC 版)
「正露丸」の記事における「商標登録と審決取消請求事件」の解説
1954年に、業界第一位で中島佐一の「忠勇征露丸」製造販売権を継承する大幸薬品(大阪府吹田市)が「正露丸(セイロガン)」の名称の独占的使用権を主張し、商標登録を行った。これに対して、クレオソートの製法を独自開発し、物資不足の第二次大戦中も軍に征露丸の納入を続けた和泉薬品工業などが反発し、1955年4月に特許庁に無効審判を請求。しかし、特許庁が1960年4月に申立不成立(つまりは登録維持)の審決を下したことから、東京高等裁判所に審決取消訴訟を提起。東京高裁は1971年9月に「『正露丸』の語、おそらく本件商標登録当時、クレオソートを主材とした整腸剤の一般的な名称として国民に認識されていたものというべき」と判断し、特許庁が下した審決を取り消す旨の判決を下した。この判決は1974年3月に最高裁で確定した。 この判決を受け、特許庁は1975年10月、「正露丸(セイロガン)」の登録無効の審決をし、この商標は無効となったものの、セイロガンの振り仮名のない「正露丸」の商標は現在も大幸薬品が保有している(1959年12月登録、登録番号第545984号)。 上記最高裁判決にもかかわらず当該商標登録が存続している事情は明らかではないものの、商標登録は判決によって自動的に取り消しとなるのではなく、改めて特許庁に審判請求を行う必要がある。しかし、例えば、上記判決により正露丸商標が普通名称化したことが判示され、商標法第26条第2号の規定により商標権の効力が及ばないことが明らかとなって所期の目的が達成されたため、敢えて権利を無効化するための審判請求を行わなかったこと等が考えられる。いずれにせよ、他社がクレオソート剤を正露丸の名で販売しても本商標権の効力は及ばず、権利侵害にはあたらない。ただし、#不正競争行為差止等請求事件に記載の通り、今後の状況の変化により、再び出所表示機能を獲得し普通名称ではないと判断される可能性はある。「アスピリン」などと同様に、いわゆるパブリック・ドメインとしての地位が確立された、数少ない医薬品のひとつといえる。
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