可算鎖条件
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/27 01:05 UTC 版)
半順序集合Pが可算鎖条件(countable chain condition、c.c.c.と略す)を満たすとは、Pのいかなる反鎖も高々可算であることをいう。
位相空間Xが可算鎖条件を満たすとは、Xの開集合族に包含関係で半順序構造を入れたときに、それが可算鎖条件を満たすことをいう。すなわち、Xの互いに交わらない開集合からなる集合族が高々可算であることと言い換えることができる。
性質
任意の可分空間は可算鎖条件を満たす。実際、もし可算稠密部分集合Dをもつ位相空間が、非可算個の互いに交わらない開集合の族を持つとすると、それら開集合の中から互いに相異なるDの元を取ってくることができるので、Dが可算であることに矛盾する。
特に、実数Rに通常の位相を入れたものは可算鎖条件を満たす。可算鎖条件を含むいくつかの条件が実数R を特徴付けるかと言う問題は、ススリンの問題として知られる。
また、可算鎖条件を満たす距離空間は可分である。しかしながら、一般の位相空間においては可算鎖条件を満たす非可分な空間も存在する。例えば、
に直積位相を入れたものがその例である。
利用
強制法において可算鎖条件を満たす半順序が用いられる。 なぜなら、そのような半順序上の強制では基数と共終数が保存されるためである。
より一般に、任意の基数κに対するκ-鎖条件(κ-chain condition)を考えることができる。 すなわち、半順序Pのいかなる反鎖もκ未満の濃度を持つとき、Pはκ-鎖条件を満たすという。 この条件も強制法において用いられることがある。
参考文献
- ケネス・キューネン『集合論 独立性証明への案内』藤田博司訳、日本評論社、2008年、ISBN 978-4-535-78382-9
- Jech, Thomas, 2003. Set Theory: The Third Millennium Edition, Revised and Expanded. Springer. ISBN 3-540-44085-2.
関連項目
可算鎖条件
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/15 06:35 UTC 版)
P の部分集合 A が P の反鎖であるとは、p, q という A の任意の2要素が、両立しない (p ⊥ q と表す。)ことを言う。両立しないとは、P の要素 r で r ≤ p かつ r ≤ q を満たすようなものが存在しないこと。 ボレル集合の集まりの例では、両立しないことは p∩q の測度が0であることであった。有限部分関数の集まりの例では、両立しないことは p∪q が関数を成さないこと(すなわち、p と q が共通の定義域で一致しない振る舞いをしていること)であった。 P が 可算鎖条件(c.c.c.) を満たすとは、P のいかなる反鎖も可算であること。(この一見明らかに不適切と思われるネーミングは、ブール代数に関する結果の歴史的な経緯による。一部の数学者には"可算反鎖条件 (c.a.c.)" と表している者もいる。) Bor(I) が c.c.c. を満たすことは簡単に分かる。ここでの測度はいくら足しても最大で1である。Fin(E,2) もまた c.c.c. を満たす。しかしその証明はもう少し難しい。(Δ-システム補題等を使う証明が知られている)。 強制法における反鎖の重要性は稠密集合と極大反鎖が同値に捉えられることにある。極大 反鎖 A は反鎖であることを保ったまま拡大することができない。それはすなわち、いかなるp ∈ P も Aの要素のどれかとは両立しないことを意味する。極大反鎖の存在はツォルンの補題による。極大反鎖 A が与えられたとして、D = { p : ある q∈A があって p≤q} と定義する。このときD は稠密で、G∩D≠0 と G∩A≠0 は同値である。逆に、稠密集合 D が与えられたとして、ツォルンの補題はから極大反鎖 A⊆D の存在が分かり、G∩D≠0 と G∩A≠0 が同値になる。 P が c.c.c. を満たすとする。x,y ∈ V と V[G] 内の関数 f:x→yが与えられたとする。f を V の内部から以下のように近似できる。u をfの名前とする。p を条件で、u が x から y への関数となることを強制するものとする。関数 F を次のように定義する。定義域は x で F(a) = { b : ∃ q ≤ p, q は u(aˇ) = bˇ を強制する } である。強制関係の定義可能性により、この定義は V で意味をなす。c.c.c. により F(a) は可算である。 要約すると、f は G によって決まってくるV 内では何か分からないが、単に全く分からないのではなく、c.c.c. forcing においては、G によらずに、任意の入力に対する f の値を推定する可算集合を特定することができる。 このことから重要な帰結が得られる。V[G] の中で f:α→β が無限順序数間の全射であるとき、全射 g:ω×α→β が V の中にあって、全射 h:α→β が V の中にある。特に、基数が崩壊しない。このことから、 2ℵ₀ ≥ ℵ2 が V[G]の中で成り立つ。 この項目は、集合論に関連した書きかけの項目です。この項目を加筆・訂正などしてくださる協力者を求めています(プロジェクト:数学/Portal:数学)。
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