反磁性の原因
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/19 01:08 UTC 版)
反磁性の起源を古典的に説明すると、物質に磁場を加えたとき、その電磁誘導によって物質中の荷電粒子(実質的には電子)に円運動が誘発され、一種の永久電流が流れ続ける。この電流は、磁場が弱くなる方向へ磁場と磁場勾配に比例した力(ローレンツ力)を生じるとともに、レンツの法則に従い外部の磁場を打ち消す方向に磁場を生み出す。この円運動の挙動はジョゼフ・ラーモアによって1895年に研究され、さらにポール・ランジュバンによって定式化されたので、これをラーモア反磁性、もしくはランジュバンの反磁性という。これは誰もまだ原子がどのように構成されているかを知らない時代であったにもかかわらず、反磁性の性質や発生する力の大きさを良く説明し、実験との一致はすばらしいものがあった。 この古典的な説明は、すべての導体が実質的に反磁性を示すことからも推測できる。変化する磁場に置かれた導体には、電磁誘導によって自由電子に円運動が起こり(誘導電流)、この電流によって磁場の変化とは反対向きの誘導磁場が生じるとともに、磁場と磁場勾配に比例した力(ローレンツ力)を生じ、導体の運動や磁場の変化に抵抗する力になる。この現象は物質の反磁性と良く似ている。 ラーモアらの理論から計算すれば、すべての物質は電子を持つのでその磁性には多かれ少なかれ反磁性の寄与があり、ほとんどのものは磁化率にして10-5程度のオーダーしかない極めて小さいものであることがわかる。 このように、反磁性は古典的な範囲で説明されたかのように思われていたが、ニールス・ボーアは古典力学で計算すると熱平衡の状態で磁性がゼロになることを1911年に見いだした(ボーア=ファン・リューエンの定理)。このため、反磁性の説明は量子力学に取って代わられたが、量子力学から厳密に導かれた結果はラーモアらの理論と正確に一致していた。量子力学によれば、不対電子が存在しない物質は弱い反磁性となり、不対電子によるスピンが存在する物質は常磁性や強磁性などの性質が顕著になる。 なお、金属中の自由電子については量子論的な取り扱いによる定式化がレフ・ランダウによってなされている。そのため、金属の電子による反磁性は、ランダウ反磁性とよばれている。
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