双有理幾何学
(双有理写像 から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/28 14:50 UTC 版)
代数幾何学では、双有理幾何学(birational geometry)の目標は、2つの代数多様体が(多様体の次元)より低い次元の部分を除き、どのようなときに同型となるかを決定することである。このことは、多項式というよりも、有理函数により与えられる写像を研究することを意味し、有理函数が極を持つところでは(写像を)定義できないことがある。
- ^ ネフ:すべての曲線 C ⊂ X に対して (L.C)≧0 が成り立つようなラインバンドル L のこと数値的正(ネフ)という、標準バンドル KX がネフであるような代数多様体のことを極小と呼ぶ。 繰り返しになるが、代数多様体上のラインバンドルは、多様体の任意の代数曲線への制限の次数が非負のときに、ネフ(nef)("numerically effective" もしくは "numerically eventually free" を短くした)と呼ばれる。 特にすべての豊富なラインバンドル(ample line bundle)はネフである。 同様に、代数多様体 X 上のカルティエ因子 D な次が成り立てば、ネフである。X の中に含まれる任意の代数曲線 C に対して、交点理論の意味で、
- ^ Kollár and Mori, Birational Geometry of Algebraic Varieties (1998), Theorem 1.29.
- ^ Hartshorne, Algebraic Geometry (1977), Exercise II.8.8.
- ^ Birkar, Cascini, Hacon, and McKernan. J. Amer. Math. Soc. 23 (2010), 405-468. Corollary 1.3.3 は、全ての単線織多様体はファノファイバー空間に双有理であることを、単線織多様体 X が次数が負である KX を持つ曲線の族により被覆されるという簡単な結果を使い示した。後者の参考としてDebarre, Higher-Dimensional Algebraic Geometry (2001), Corollary 4.11 および Example 4.7(1) を参照。
双有理写像
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/02 09:06 UTC 版)
ある(既約(irreducible)な)代数多様体 X から別の多様体 Y への有理写像(英語版)は、ダッシュ付矢印で X − → Y {\displaystyle X\;-\!\!\to Y} と書かれ、X の空ではない開集合 U から Y への射(英語版)(morphism)として定義される。代数幾何学で使用されるザリスキ位相の定義により、空ではない開部分集合 U は常に X の低い次元の部分集合の補集合である。具体的には、有理写像は有理函数を使って座標で記述することができる。 X から Y への双有理写像(birational map)は、有理写像 f : X − → Y {\displaystyle f\colon X\;-\!\!\to Y} であり、f の逆写像 Y − → X {\displaystyle Y\;-\!\!\to X} も有理写像である写像を言う。双有理写像は、X の空でない開集合から Y の空でない開集合への同型をひき起こす。このとき、X と Y は 双有理(birational) もしくは 双有理同値(birationally equivalent)と言う。代数的なことばでは、体 k 上の2つの多様体が双有理とは、それらの代数多様体の函数体が k の拡大体として同型であることと同値である。 特別な場合として、双有理写像 f: X → Y が代数多様体の射(morphism)となる場合がある。すなわち、f が全ての領域の上で定義されているが、逆が必ずしも全ての領域で定義されていない場合である。典型的には、双有理写像が X の部分多様体を Y の点へ縮めることがあるからである。 多様体 X が有理的とは、ある次元のアフィン空間(もしくは、同じことであるが、射影空間)と双有理的である場合を言う。有理性は、非常に自然な性質であって、X からより低い次元の部分集合を引いたものが、アフィン空間からあるより低い次元の部分集合を引いたものと同一視できることを意味する。 例えば、次の方程式を持つ円を考える。x2 + y2 − 1 = 0この円は、有理曲線である。というのは、式 x = 2 t 1 + t 2 {\displaystyle x={\frac {2\,t}{1+t^{2}}}} と y = 1 − t 2 1 + t 2 , {\displaystyle y={\frac {1-t^{2}}{1+t^{2}}}\,,} は、アフィン直線から円への双有理写像を定義するからである。逆写像は、(x, y) を (1 − y) / x へ写す。 さらに一般的には、任意次元の滑らかな二次(次数 2)の超曲面 X は、立体射影により有理的である。(体 k 上で 2次的な X に対し、X はk-有理点を持っている。k が代数的閉体であれば、自動的にそのようになる。)立体射影を定義するために、p を X の点とすると、X の中の点 q を p と q を通る力線へ写像することにより、X から p を通る直線の射影空間 Pn への双有理写像を定義する。これは双有理写像であるが、しかし多様体の同型ではない。なぜならば、q = p では定義できないからである(そして、逆写像も X に含まれる p を通るこれらの直線を定義することができない)。
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