原子力発電所警備対策官
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/24 07:00 UTC 版)
原子力発電所警備対策官 | |
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創設 | 2005年(平成17年)10月1日 |
廃止 | 2009年(平成21年) |
所属政体 | ![]() |
所属組織 | ![]() |
兵種/任務 | 対テロ作戦 |
人員 | 18人 |
所在地 | 新潟県柏崎市・刈羽郡刈羽村 |
編成地 | 新潟県上越市 |
上級単位 | 上越海上保安署 |
最終上級単位 | 第九管区海上保安本部 |
担当地域 | 柏崎刈羽原子力発電所 |
海上保安庁 |
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![]() |
海上保安庁本庁 |
地方機構 |
教育機関 |
その他 |
原子力発電所警備対策官(げんしりょくはつでんしょけいびたいさくかん)は、海上保安庁に存在していた組織及び役職の一つ[1][2]。新潟県の柏崎刈羽原子力発電所をテロ災害から守るために配備されていた、警備専門の対テロ作戦部隊である[3]。原発警備対策官[4]、原発警備対策部隊[3]とも呼称される。
概要
海上保安庁は、臨海部の原子力発電所などの重要施設等へのテロを未然防止するため巡視船艇・航空機等による海上などからの警戒、警察との共同訓練及び毎日の情報交換を実施している[2]。2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件を受けてからは、その警備体制をさらに強化しつつあった[3]。
2005年10月1日[注釈 1]、海上保安庁は「原子力発電所のテロ対策・危機管理体制の強化を図る」「原子力発電所における海上警備を適切かつ効率的に実施する」ことを目的として、新潟県上越市の上越海上保安署(第九管区)に原子力発電所警備対策官を配置した[1]。
編成
所属は上越海上保安署だが、実際には柏崎刈羽原子力発電所に直接配置されていた[4]。発電所内にある核燃料荷揚げ用の専用港内に所在しており、巡視船が運用できない悪天候時の対応や、小回りの利く警備の必要性から専門の対処部隊として必要になったとされる[3]。
部隊は警備対策官18名[1]と、小型高速警備艇1隻からなり、港内の防波堤に新設された桟橋[注釈 2]に配置されていた。同じ海上保安庁の特殊警備隊(SST)と同様に秘匿性が高く、装備する武器などは公表されていない[3]。
運用していた小型高速警備艇は、上越海上保安署に所属していた警備取締艇「SSG-01 さじたりうす」で、警備対策官の配備開始と同じ2005年10月1日に竣工し、原発周辺の警備に就いていた[5]。しかし2009年に関西国際空港海上保安航空基地(第五管区)へと配属替えとなり、同年3月31日に船種と船名も警備艇「GS-01 はやて」に変更、それ以降はもっぱら特殊警備隊(SST)の乗艇として用いられている[5]。
他原子力関連施設における警備
原発警備対策官は、他の原子力発電所には配置されていない。
しかし、同様に日本海側かつ管内に原子力発電所の多い第八管区では原発テロ対策として、舞鶴ヘリポートを2億円かけて再整備し、エプロンを4倍に拡張して2機のヘリの待機を可能とし、さらに夜間運用を行うために照明設備等を設置して航空作戦能力を増強した[3][6]。さらに2020年代には、同管区の敦賀海上保安部に初の大型巡視船としてくにがみ型巡視船2隻[7]、また同管区の舞鶴海上保安部にも同型船1隻を配備している[8]。島根原子力発電所でも海上保安庁のモーターボートが配備されていた[9]。
また、警察でもサブマシンガンやライフル銃などを装備した「原発特別警備部隊」を全国の原子力発電所(柏崎刈羽原子力発電所も含む)に常駐させ、警備に充てている。
主要装備
- SSG-01 さじたりうす:警備取締艇。2009年3月31日に関西国際空港海上保安航空基地(第五管区海上保安本部)へ配属替え、船種は警備艇に変更、船名も「GS-01 はやて」に改められた。
脚注
注釈
出典
- ^ a b c 「港湾危機管理対策官」及び「原子力発電所警備対策官」の配置について(お知らせ) at the Wayback Machine (archived 2022年7月23日)
- ^ a b “本編 治安の確保 海上犯罪の現況 3 テロ対策”. 海上保安レポート2006. 海上保安庁. p. 65. 2025年8月20日閲覧。
- ^ a b c d e f g 柿谷 & 菊池 2008, pp. 158–159.
- ^ a b “発電所誘致の経過概要(2004年5月19日~2007年7月19日)”. 柏崎市公式ホームページ. 柏崎市. 2025年8月20日閲覧。
- ^ a b 海人社 2023, pp. 84.
- ^ 矢野 2011, p. 6.
- ^ 「原発テロ対策に大型巡視船…日本海側の要・福井に2隻配備へ 東京五輪に向け体制整備」『産経新聞』、産経新聞社、2018年7月21日。オリジナルの2020年6月22日時点におけるアーカイブ 。
- ^ 深水千翔「日本海の“原発銀座”どう護る? 新巡視船「わかさ」海保へ 運用する“海の機動隊” とは」『乗りものニュース』、メディア・ヴァーグ、2023年2月15日 。
- ^ 矢野 2011, p. 7.
参考文献
- 柿谷哲也; 菊池雅之『最新 日本の対テロ特殊部隊』三修社、2008年。ISBN 978-4384042252。
- 海人社『世界の艦船(通号1005) 2023年11月』2023年。NDLBibID: 000000013335
- 矢野義昭「原発のテロ対策は十分か?第1部:日本の警備体制を検証する」『JBpress』、日本ビジネスプレス、2011年。オリジナルの2011年6月12日時点におけるアーカイブ 。
関連項目
- 原発特別警備部隊 - 日本の警察で原子力発電所の警備を行う部隊
- 核緊急支援隊 - アメリカ合衆国エネルギー省で核・放射能に関する事件・事故を扱う専門家チーム
- 民間核施設保安隊 - イギリス国内の民間核施設警備を担当する特別警察機関
- 特殊防護小隊(PSPG) - フランスの原発警備を担当する国家憲兵隊の部隊
- 港湾危機管理対策官:原発警備対策官と同日に海保が配置した、五大港(東京、横浜、名古屋、大阪、神戸)のテロ対策に対応する役職。
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