原始生命体の細胞
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/12/08 02:43 UTC 版)
生命の起源でも述べているが生命誕生を論じるうえではどのような物体が生命なのかということを定義しなければならない。生命の起源の記事では、 代謝系を有する。 細胞という形状を有する。 自己複製が可能である。 という上記の3点を有する物質が生命と定義された。したがって、原始生命体とはいえ上記の3点を有しなければ生命とはいえないとしたいところだが、表面代謝説に代表される生命の起源に関する多くの新説の提案よりこの定義すら曖昧になりつつあるのが現状である。 原始生命体の細胞、あるいはその生命のあり方は多くの提案がなされているが、オパーリンの提案したコアセルベート説によると、 アミノ酸、核酸、脂質等有機物が複雑に重合したミセル が原始生命体に進化したとしている。ただし、どのようなミセルが生命となったかという点については、上記3点の定義を有するものとしている。 1988年にドイツ人弁護士ギュンター・ヴェヒターショイザーによって提案された表面代謝説では、 黄鉄鉱上に吸着したアミノ酸、核酸、脂質などが触媒(そのまま黄鉄鉱がその役割を果たした)され、構築された代謝系 が原始生命体に進化したとしている。この表面代謝説では生命の定義として代謝系を有することと言うよりはむしろ、代謝系そのものが生命と考えられている。そして 吸着しやすい炭化水素(イソプレノイドアルコール)からなる膜脂質が表面代謝系ごと遊離したもの が、細胞を有する生命が誕生したというモデルへとつながる。 東京薬科大学の大島泰郎教授によると、コモノート以前の生命は、 個体ゲノムは代謝系を構築できず、個体間同士の遺伝子産物の交換によって代謝系を構築していた としている。この後、1つの細胞内に遺伝子が集合し個体内での完全なる代謝系を構築したものがコモノートへ進化したというモデルへつながる。この説は化学進化的考えよりはむしろ生物進化的考えに近いものがあるが、代謝系は遺伝的仕組みが成立していない複数の個体間で行なわれていたという点で原始生命体のあり方に信憑性を持たせた。 様々なフェーズの生命が原始生命体1つとっても論じられるが、やはり表面代謝や進化することが不可能な細胞間代謝によって形作られる生命の生化学を論じることは困難である。したがって、本項においては生命の定義3点を有する最初の生命を原始生命体とする。
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