南海11000系電車とは? わかりやすく解説

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南海11000系電車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/10 01:58 UTC 版)

南海11000系電車
11000系電車
(2015年8月23日 新今宮駅
基本情報
運用者 南海電気鉄道
製造所 東急車輛製造
製造年 1992年
製造数 4両
運用開始 1992年11月10日
投入先 高野線難波駅 - 橋本駅間)
泉北線
主要諸元
編成 4両編成(全電動車
軌間 1,067 mm
電気方式 直流1,500 V
架空電車線方式
最高運転速度 100 km/h
設計最高速度 120 km/h
起動加速度 2.5 km/h/s
減速度(常用) 3.7 km/h/s
減速度(非常) 4.0 km/h/s
編成定員 248人
車体 普通鋼
台車 S形ミンデン式ダイレクトマウント空気ばね台車
住友金属工業FS-552
主電動機 直流直巻電動機
MB-3072-B
主電動機出力 145 kW(375 V時)
駆動方式 WNドライブ
歯車比 83:18(4.61)
編成出力 2,320 kW
制御方式 超多段式バーニア抵抗制御
制御装置 日立製作所VMC-HTB-20H
制動装置 発電ブレーキ併用
全電気指令式電磁直通ブレーキMBS-D
応荷重装置付)
保安装置 南海型ATS
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南海11000系電車(なんかい11000けいでんしゃ)は、1992年平成4年)11月10日に営業運転を開始した南海電気鉄道特急形車両である。

車両概説

1992年(平成4年)11月10日に運行を開始した、高野線難波駅 - 橋本駅間の特急りんかん」用の車両として、東急車輛製造(現:総合車両製作所)で4両編成×1本が製造された。10000系4次車(特急「サザン」増結用中間車)をベースに設計されている。

2015年(平成27年)12月5日からは、難波駅 - 泉北高速鉄道(現・泉北線)和泉中央駅間を結ぶ特急「泉北ライナー」としても運転されている。

車体

10000系を基本とした20 m級の普通鋼製車体で、前頭部は同系のデザインを踏襲しつつ半流線形とし、スピード感を持たせている。側窓は10000系4次車と同様の複層ガラスを使用した大型連続窓である。出入口は折り戸で、各車片側1か所備える。列車種別・行先表示器2000系と同様の個別表示式で、各車の出入口付近に設置している。前面貫通扉は当初非常用であったが、1999年(平成11年)の31000系登場に合わせて橋本方先頭車(モハ11201形)に幌受けアダプターを新設し、31000系との併結時のみ車内からの通り抜けを可能としている[1]

落成当初のカラーデザインは、10000系に準じたメタリックシルバー塗装に青とオレンジの帯()であった。その後の変遷については後述する。

なお2021年令和3年)1月には、前照灯シールドビームからLEDに変更している[2]

車内設備

車内

客室照明はスリット入り半間接照明で、荷棚下には南海伝統の読書灯も設置されている。座席はフリーストップ式回転リクライニングシートで、センターアームレスト(中ひじ掛け)やひじ掛け内蔵テーブルのほか、足元には跳ね上げ式フットレストを備えている。シートピッチ30000系より30 mm拡大した1,030 mmとしている。車内案内表示器は10000系4次車と同型の3色LED式を装備する。

モハ11301形にはトイレと洗面所、モハ11101形の客室には車椅子スペースを設けている。モハ11101形の上り方には自動販売機を有するサービスコーナーがあり、かつては公衆電話やサービスカウンターも備えていたが、現在は撤去・閉鎖されている。

2014年(平成26年)以降には、天井照明と読書灯を昼白色LED照明に交換し、サービスレベルの向上が図られている[2]

なお、本系列は車載型の自動放送装置を搭載しているが、これは「りんかん」運用時にのみ対応するものである。

主要機器

制御方式は30000系と同じ抵抗制御であるが、制御装置は10000系4次車と共通設計とした超多段式バーニア制御日立製作所製 VMC-HTB-20H形 を採用している。高速度遮断器には真空遮断器を使用し、故障時の保護機能を向上させている。ブレーキ装置は全電気指令式電磁直通ブレーキ台車S形ミンデン台車である。電動機出力は145 kWで全電動車編成を組んでいるが、20 m級車体であるため橋本駅以南の山岳区間には入線できない。

補助電源装置には、絶縁形GTOコンバータ/トランジスタインバータ装置(出力75 kVA)を採用している。システムはDC-DCコンバータ部とインバータ部で構成され、コンバータ部で直流1500 Vから安定した直流330 Vを出力、インバータ部で直流330 Vを三相交流220 Vに変換する。冷房装置は、コンバータからの直流330 Vを電源とする、インバータ制御方式のユニットクーラーを各車3基ずつ搭載する[注 1]

このほか警笛は、従来の空気式に加え電気式のものを併設している[注 2]

1999年(平成11年)、30000系・31000系との併結対応改造として、制御装置の特性が変更された[1]

編成表

電動車方式で、難波方先頭車がモハ11001形、難波方中間車がモハ11301形、橋本方中間車がモハ11101形、橋本方先頭車がモハ11201形となっている。

← 難波
橋本・和泉中央 →
形式
 ◇
◇ 

モハ11001
(Mc1)

モハ11301
(M2)

モハ11101
(M1)

モハ11201
(Mc2)
竣工[3] 備考
定員[4] 52 60 58 64
設備[4] トイレ
洗面所
車椅子スペース
サービスコーナー
車両番号 11001 11301 11101 11201 1992/08/31

運用

本系列は高野線山岳区間に乗り入れ可能な17 m級車両(ズームカー)ではないため、高野線平坦区間の難波駅 - 橋本駅間を結ぶ特急「りんかん」に長らく運用されてきた。30000系の更新工事が完了した2000年(平成12年)12月23日ダイヤ改正からは、ラッシュ時に30000系・31000系を併結し8両編成でも運転されている[5]

2015年(平成27年)12月5日のダイヤ改正からは難波駅 - 和泉中央駅間を結ぶ特急「泉北ライナー」が新設され、本系列が充当されるようになった[6]。ただし、毎年1月から2月の冬季閑散期の車両定期検査期間中には、本系列が「りんかん」運用に復帰し、「泉北ライナー」運用を南海12000系(サザン・プレミアム)で代走するのが通例となっている[7]

2017年1月も上記の代走体制が開始された[8]が、1月27日より泉北高速鉄道が自社発注の特急車12000系を「泉北ライナー」に投入したため、本系列は暫く「泉北ライナー」運用から離れていた。同年8月26日のダイヤ改正で「泉北ライナー」が増発され2編成による運用体制となることから、再び「泉北ライナー」に使用されるようになった[9]

30000系の脱線事故に伴い、2022年(令和4年)11月3日から「りんかん」運用に臨時復帰した[10][11]。「泉北ライナー」運用へは、予備編成に余裕のあった50000系が投入された。30000系の復帰後も暫く代走体制が継続されていたが、2023年(令和5年)10月1日より本系列の「泉北ライナー」運用が再開された[12]

車両カラーデザインの変遷

  • 1992年(平成4年):メタリックシルバー地に青とオレンジの2色帯()で登場。
  • 1999年(平成11年):31000系デビューに合わせて、白地に赤帯の塗装()に変更[1]。「りんかん」8両編成運転に備える。
  • 2015年(平成27年)
    • 12月:「泉北ライナー」用として、出入口付近に列車愛称ロゴ入りの識別ステッカーを貼り付け[6]
  • 2016年(平成28年)
    • 1月:「泉北ライナー」運用を一時離脱[7]。識別ステッカーを撤去。「泉北ライナー」運用は南海12000系が代走。
    • 3月:「泉北ライナー」運用復帰に合わせ、赤帯の一部を金色にラッピング[13])。列車愛称ロゴ付近はグラデーション模様とした。
  • 2017年(平成29年)
    • 1月:「泉北ライナー」運用から一時撤退。ラッピングを剥離[8])。「泉北ライナー」は1月27日までの間は南海12000系で代走、以降は泉北高速12000系での運用となる。
    • 8月:増発に伴い「泉北ライナー」運用を再開、赤帯部に泉北高速12000系準拠の金色ベースに青と黒の2色帯を纏った2代目ラッピングを貼り付け[9])。
  • 2018年(平成30年)
    • 1月:30000系30001編成の検査入場に伴い、「泉北ライナー」運用から離脱。ラッピングを剥離[14])。
    • 2月:30001編成の運用復帰に合わせて「泉北ライナー」運用を再開、デザインを一部変更した「泉北ライナー」3代目ラッピングを貼り付け[15])。2代目から青帯の一部や列車愛称ロゴが省略された。
以降、毎年1月から2月の高野線特急車の定期検査時には「泉北ライナー」運用から離脱するため、ラッピングを剥離。復帰時は3代目ラッピングを装飾。
  • 2022年(令和4年)
    • 11月:30000系30001編成脱線に伴う運用調整のため「りんかん」運用に臨時投入、ラッピングを剥離[11])。「泉北ライナー」運用には50000系が入る。
  • 2023年(令和5年)
    • 10月:「泉北ライナー」運用に復帰。ラッピングは省略され、識別ステッカーのみ貼り付け[12])。

脚注

注釈

  1. ^ これは同時期に登場した1000系と共通のシステムである。
  2. ^ これは以降に製造された特急車にも標準装備されるようになり、30000系についても1999年(平成11年)の更新工事の際に追加された。

出典

  1. ^ a b c 「車両総説」-『鉄道ピクトリアル』2008年8月臨時増刊号、P.48
  2. ^ a b 「車両総説」-『鉄道ピクトリアル』2023年10月臨時増刊号、P.51
  3. ^ 「南海電気鉄道車両履歴表」-『鉄道ピクトリアル』1995年12月臨時増刊号、P.264
  4. ^ a b 特急りんかん 11000系:座席表 - 南海電気鉄道(2025年1月23日閲覧)
  5. ^ 「南海個性派列車列伝」-『鉄道ピクトリアル』2008年8月臨時増刊号、P.147
  6. ^ a b “泉北ライナー”の運転開始」-『railf.jp(鉄道ニュース』、交友社(2015年12月6日)
  7. ^ a b 南海12000系が“泉北ライナー”を代走」-『railf.jp(鉄道ニュース』、交友社(2016年1月6日)
  8. ^ a b 【南海+泉北高速】〈泉北ライナー〉の話題」-『鉄道ホビダス(鉄道投稿情報局)』、ネコ・パブリッシング(2017年1月23日)
  9. ^ a b 南海11000系が“泉北ライナー”カラーに」-『railf.jp(鉄道ニュース』、交友社(2017年8月30日)
  10. ^ 11月1日(火)より、50000系車両(ラピート)を特急泉北ライナーとして運行します~10月30日(日)に試乗会を実施~ (PDF) - 南海電気鉄道・泉北高速鉄道(2022年9月30日)
  11. ^ a b 南海11000系が“りんかん”に復帰」-『railf.jp(鉄道ニュース』、交友社(2022年11月5日)
  12. ^ a b 南海11000系が通常塗装で“泉北ライナー”運用に復帰」-『railf.jp(鉄道ニュース』、交友社(2023年10月1日)
  13. ^ 南海11000系に小変化」-『railf.jp(鉄道ニュース』、交友社(2016年3月8日)
  14. ^ 【南海】11000系塗装変更」-『鉄道ホビダス(鉄道投稿情報局)』、ネコ・パブリッシング(2018年2月14日)
  15. ^ 南海11000系が“泉北ライナー”運用に復帰」-『railf.jp(鉄道ニュース』、交友社(2018年2月26日)

参考文献

関連項目

外部リンク




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