十二音技法以外における半音階の均等な使用例
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/19 05:26 UTC 版)
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歴史的には、バッハの「音楽の捧げもの」の第1曲や平均律クラヴィーア曲集第一巻のロ短調で十二音全てを使った例が挙げられる。また、モーツァルトが交響曲第40番終楽章で十二音に近いメロディーを提示しているのが有名である他、『ドン・ジョヴァンニ』にも同様に十二音風のフレーズが現れ、これを20世紀後半になってダリウス・ミヨーが指摘している。リストは『ファウスト交響曲』で、全てを知り尽くそうとするファウストの欲求を表すために十二音全てを使った主題を用いている。 ロマン派の後期になると、マックス・レーガーやリヒャルト・シュトラウスの作品にも十二音に限りなく近い主題が散見される。後者は交響詩『ツァラトゥストラはかく語りき』の「科学について」のフガートでやはり十二音全てを使った主題を用いている。マーラーの未完の交響曲第10番のうち唯一の完成楽章であるアダージョでは、半音階の十二音のうち11音が組み合わされた複雑な和音が、その楽章のクライマックスにおいて鳴らされる。 20世紀に入ると、バルトークが中心軸システムによって半音階の十二音全てを均等的に使用することを理論的に確立させた。調性音楽の理論上において事実上半音階の均等に至ったのは彼の功績といえる。 対位法と全く関わりなく十二音技法を達成している作曲家は、戦前ではヨーゼフ・マティアス・ハウアーとニコライ・オブーホフ(英語版、ドイツ語版)が挙げられる。 戦後は松平頼則、ダッラピッコラ、ゲディーニ、ブラッド、ペトラッシ、ストラヴィンスキー、スティーヴンス、ルトスワフスキなどが、自由に十二音を用いる作曲法を個別に展開している。 ロマン・ブラッドなどの作曲家は、クラシックの作曲家が十二音に近いフレーズを偶然発見してしまうことをテーマに作品を書いている。 ショスタコーヴィチの『交響曲第15番』『弦楽四重奏曲第15番』、オネゲルの『交響曲第5番』、デュティユーの『メタボール』第3楽章には、部分的に十二音を一度ずつ用いるメロディが主題として用いられている。これらは新ウィーン楽派の十二音技法とは異なる使い方であるが、戦後に無調音楽や十二音技法が浸透し、今まで距離を置いてきた作曲家たちが実験的に用いるようになった一例と言える。
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