れい‐き【励起】
励起状態
(勵起 から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/19 04:26 UTC 版)
![]() |
この記事は検証可能な参考文献や出典が全く示されていないか、不十分です。(2017年5月)
|
量子力学において、励起状態(れいきじょうたい、英: Excited state)は、(原子、分子、あるいは原子核といった)系のハミルトニアンの固有状態のうち、基底状態より高いエネルギーの全ての固有状態(量子状態)を指す。励起(Excitation)は、光、熱、電場、磁場などの外場によって引き起こされる。励起により、基底状態にあった固有状態は励起状態へ、励起状態にあった固有状態はより高いエネルギーを持った励起状態へ移る。
励起を引き起こすものは、上記以外にも電子や陽子、中性子、分子、イオンの入射、衝突や、フォノンなどによる励起もある。
密度汎関数法に基づくバンド計算では、励起状態が正しく求まる保証がない(→密度汎関数法参照)。
原子の励起
この概念の単純な例として水素原子について考える。
水素原子の基底状態は、原子の単一の電子が可能な最低オービタル(すなわち、球対称な "1s" 波動関数。これは可能な最も低い量子数の組み合わせを持つ)にあることに相当する。原子に追加のエネルギーを(例えば、適切なエネルギーのフォトンの吸収によって)与えることで、電子は励起状態(1つ以上の量子数が基底状態よりも大きい状態)に移ることができる。フォトンが過大なエネルギー(水素原子のイオン化エネルギー以上のエネルギー)を持つとすると、電子は原子に束縛されなくなり、原子はイオン化する。
励起後、原子は特徴的なエネルギーを持つフォトンを放出することによって基底状態あるいはより低い励起状態に戻る。様々な励起状態にある原子からのフォトンの放出によって一連の特徴的な輝線(水素原子の場合は、ライマン系列、バルマー系列、パッシェン系列、ブラケット系列など)を示す電磁スペクトルがもたらされる。
高励起状態にある原子はリュードベリ原子と呼ばれる。高度に励起された原子の系は寿命の長い凝集励起状態(例えば、完全に励起原子から構成される凝集相: リュードベリ物質)を形成できる。水素は熱または電気によっても励起されうる。
励起状態の計算
励起状態は結合クラスター法、メラー=プレセット摂動理論、多配置自己無撞着場、配置間相互作用[1]、多参照配置間相互作用法、時間依存密度汎関数法[2][3][4][5][6]を使って計算されることが多い。
反応
励起状態の形成の帰結として、励起状態にある原子または分子の反応が起こりうる。
基本的励起状態
励起の混合状態
- フォノン-ポラリトン - フォノン・フォトン間の相互作用
- 励起子ポラリトン - 励起子・フォトン間の相互作用
- プラズモン-フォノン混合状態 - プラズモン・光学フォノン間の相互作用
- ポーラロン - 電子・光学フォノン間の相互作用
- 磁気ポーラロン - 電子スピン・光学フォノン間の相互作用
出典
- ^ Hehre, Warren J. (2003). A Guide to Molecular Mechanics and Quantum Chemical Calculations. Irvine, California: Wavefunction, Inc.. ISBN 1-890661-06-6
- ^ Glaesemann, Kurt R.; Govind, Niranjan; Krishnamoorthy, Sriram; Kowalski, Karol (2010). “EOMCC, MRPT, and TDDFT Studies of Charge Transfer Processes in Mixed-Valence Compounds: Application to the Spiro Molecule”. The Journal of Physical Chemistry A 114 (33): 8764–8771. Bibcode: 2010JPCA..114.8764G. doi:10.1021/jp101761d. PMID 20540550.
- ^ Dreuw, Andreas; Head-Gordon, Martin (2005). “Single-Reference ab Initio Methods for the Calculation of Excited States of Large Molecules”. Chemical Reviews 105 (11): 4009–37. doi:10.1021/cr0505627. PMID 16277369.
- ^ Knowles, Peter J.; Werner, Hans-Joachim (1992). “Internally contracted multiconfiguration-reference configuration interaction calculations for excited states”. Theoretica Chimica Acta 84: 95. doi:10.1007/BF01117405.
- ^ Foresman, James B.; Head-Gordon, Martin; Pople, John A.; Frisch, Michael J. (1992). “Toward a systematic molecular orbital theory for excited states”. The Journal of Physical Chemistry 96: 135. doi:10.1021/j100180a030.
- ^ Glaesemann, Kurt R.; Gordon, Mark S.; Nakano, Haruyuki (1999). “A study of FeCO+ with correlated wavefunctions”. Physical Chemistry Chemical Physics 1 (6): 967–975. Bibcode: 1999PCCP....1..967G. doi:10.1039/a808518h.
関連項目
励起 (electrical excitation)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/15 16:37 UTC 版)
「放射線」の記事における「励起 (electrical excitation)」の解説
放射線によって励起された原子や分子が、その後に発光することがある。発光する物質をシンチレータ (scintillator) と呼ぶ。この発光現象を利用して放射線を検出器の原理とするものをシンチレーション検出器と呼ぶ。
※この「励起 (electrical excitation)」の解説は、「放射線」の解説の一部です。
「励起 (electrical excitation)」を含む「放射線」の記事については、「放射線」の概要を参照ください。
「励起」の例文・使い方・用例・文例
- 励起子束縛エネルギー
- (励起分子か物質)に適切な物質を加えることによって、(ルミネッセンスか燐光)の度を減少させる
- 原子を励起する
- 蛍光色素を励起する波長で試料を照射する、光を使用した顕微鏡検査
- 電磁放射の吸収の可能性において最大限の激しさを引き起こしている安定粒子の励起状態
- 溶液が半透性膜によって純粋溶媒と隔てられるとき、その溶液に浸透しないように必要な溶液によって励起される圧力
- 特殊な蛍光物質に交流電圧を加えると,電子が励起され光を発する現象
- 物質に電場を加えると,物質の電子が励起され光を発する現象
- 物質に電場を加えると,物質の電子が励起され光を発すること
勵起と同じ種類の言葉
- >> 「勵起」を含む用語の索引
- 勵起のページへのリンク