労働法による修正
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/28 07:37 UTC 版)
民法での雇用は、雇い主と労働者とが対等の地位にあるとの前提のもとに、それぞれ自己の自由意志によって締結される契約である。これは日本の民法がブルジョワ市民革命としてのフランス革命の精神に則って編纂されたフランス民法典(ナポレオン法典)の影響を大きく受けた市民社会モデルを想定しているためである。 しかし、労働者が生産手段を有する資本家に対して自らの労働力を時間を決めて提供し賃金を得るという雇用の本質の関係上、実際には労働者は事業主に対して経済的・社会的に従属的地位に立たされることになる。そのため、労働法の分野では契約自由の原則に大きな修正が加えられる必要を生じ、国家は社会保障の観点から労働基準法などの各種労働法規を立法し労働者の保護を図っている。 その結果、多くの労働契約には労働契約法・労働基準法・労働組合法など労働法の規定が適用されるため民法の規定が適用されることはほとんどない。なお、家事使用人は労働基準法が適用されない典型例であるが(労働基準法第116条第2項)、2008年施行の労働契約法は「事業」を労働契約の要件にしておらず労働契約法については家事使用人にも適用がある。 民法の規定は労働者側からの退職に民法第627条が適用されるなど補充的に機能する場合もあるが、退職に関する事項については労働基準法第89条3項によって就業規則の必要的記載事項とされていることもあり、退職についても実際には就業規則やそれに基づいて定められる個々の労働契約の定めによることとなる(多数説によれば民法第627条は任意法規であるとするが反対説もある)。以上のように労働法による大きな修正を受けてはいるが、理論上、民法の雇用の規定は労働法の基礎となる一般的規定としての意味を有する。
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