加用正とは? わかりやすく解説

加用正

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/10/18 02:39 UTC 版)

加用正
基本情報
国籍 日本
出身地 神奈川県横浜市南区
生年月日 (1953-05-17) 1953年5月17日(72歳)
騎手情報
所属団体 日本中央競馬会(JRA)
所属厩舎 栗東・谷栄次郎(1969年11月 - 1975年8月)
栗東・瀬戸口勉(1975年9月 - 1986年9月)
栗東・フリー(1986年10月 - 引退)
初免許年 1976年
騎手引退日 1993年
重賞勝利 20勝
通算勝利 5493戦559勝
調教師情報
初免許年 1993年(1994年開業)
調教師引退日 2024年3月5日
重賞勝利 31勝(中央14勝、地方交流17勝)
G1級勝利 2勝(うち地方交流2勝)
通算勝利 中央7548戦639勝、地方311戦55勝
経歴
所属 栗東T.C.
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加用 正(かよう ただし、1953年5月17日 - )は、神奈川県横浜市南区出身の元騎手・元調教師

来歴

動物が好きな母の影響で、小さい頃から生き物は身近な存在であり、イヌネコハトなども家にいて、加用も自然と動物が好きになった[1]。兄2人は大学に通っていたが、加用は魅力を感じず「早くから手に職を持ちたい」と探していたところ、馬事公苑騎手課程を紹介するテレビを見たことで騎手を志す[1]。父には反対されたが[1]、母の後押しもあって[1]関東学院附属中学校卒業後に馬事公苑騎手課程へ入所。馬に乗った瞬間は感動し、目線が高くなって景色が変わり「自分が大好きな馬に乗っているんだ」と思うと、嬉しくなった[1]

馬事公苑2年次より京都谷八郎厩舎の下で研修に入るが、書類上は八郎の義父である谷栄次郎厩舎であった。騎手の試験には4回も落ちたが[1]、ラストチャンスだと考えていた5回目でなんとか受かり[1]1976年にで半年間の研修を積んだ瀬戸口勉厩舎からデビュー。

1年目の1976年には3月6日阪神第2競走4歳未勝利・カクノホープで初騎乗を果たすが、2着で初勝利はならなかった[2]。同日は阪神障害ステークス(春)・マルブツビート(13頭中9着)で重賞初騎乗も果たし、翌7日の阪神第10競走須磨特別・カクノヤシマで初勝利を挙げる[2]9月12日阪神障害ステークス(秋)ではダイエースワローで3着に入り、同19日の阪神では初の1日2勝を挙げる[3]10月2日3日の阪神では初の2日連続勝利を記録し、9日の阪神第12競走4歳以上オープンではロングホークに騎乗して3着に入った[4]。1年目から2桁勝利の19勝[5]をマークし、関西の新人賞に当たる中央競馬関西放送記者クラブ賞を受賞[6]

2年目の1977年には4月3日の阪神第11競走5歳以上オープンを2度目の騎乗となったロングホークで勝利するが、ロングホークにとっては最後の勝利となった[7]5月1日京都では第1→2→3競走と3連勝[8]で初の1日3勝[9]を挙げるるなど30勝をマークし、1983年まで7年連続30勝以上を記録[5]

3年目の1978年には京都記念(春)でハッコウオーに騎乗し、オークスリニアクインに先着すると同時にエリモジョージホクトボーイ天皇賞馬2頭に割って入る2着と健闘[10]7月8日中京第10競走5歳以上1000万下では後にタマモクロスミヤマポピー兄妹の母となるグリーンシャトーに騎乗し[11]、管理する北橋修二厩舎に初出走初勝利をもたらす[12]

1980年にはノトダイバーでシンザン記念を制し、管理する北橋[13]と共に重賞初勝利を挙げると、きさらぎ賞ではラフオンテースの6連勝を阻止して[14]重賞2連勝を飾る[15] [16]タイテエム産駒ウエスタンジョージでは愛知杯を制し[17]

1978年には46勝をマークし全国8位で初のベスト10入りを果たすと、1980年は自己最高の53勝を挙げて全国6位に付けた[5]

1981年にはウエスタンジョージで金杯(西)中日新聞杯と年またぎ重賞3連勝を決め、マイラーズカップではダービーカツラノハイセイコの2着に終わった[17]。ノトダイバーでは第1回ジャパンカップと同日に行われた京阪杯[18]を制し、1982年には連覇[16]

1982年の鳴尾記念では瀬戸口の管理馬マルブツウイナーで代打武田悟のノトダイバーにハナ差勝利し[19] 、瀬戸口に平地重賞初勝利をもたらした[20]

1985年阪神3歳ステークスではノトパーソでカツラギハイデンの2着[21]1986年京都大賞典ではメンバー中唯一の関東馬チェスナットバレーでスズカコバンの2着[22]に入った。

中堅騎手として安定した成績を保ち、1986年にはフリーとなり、1987年の第1回中日スポーツ賞4歳ステークスをヒデリュウオーで逃げ切って初代優勝馬[23]になったと同時に父サクラシンゲキに重賞初勝利をもたらした[24]

1988年阪神大賞典ではダイナカーペンターに騎乗した際、有力馬が後ろで牽制しあえば勝機はあると考え、1ハロン13秒台が連続し、1000m通過ラップは1分6秒6、2000m2分11秒0という超スローペースを生み出す[25]。最後の直線では外のマルブツファーストと間に割って入ったタマモクロスと3頭が並んで追い比べとなったが、結局3頭並んで決勝線を通過[26] [27]。写真判定の結果、タマモクロスと全く同時に通過していることが判明し、加用の事前の読み通りのレース展開で[25]、重賞では1979年の福島記念以来9年ぶり5例目となる1着同着となった[28]

1989年の京都記念でもダイナカーペンターでミスターシクレノン・ミヤマポピー・スピードヒーローを従えて逃げ切り[29]、同年の菊花賞では関東馬レインボーアンバーバンブービギンの2着に入った[30]

1991年の京都記念ではラストランのサンドピアリス[31]を直線半ばで外から差を詰めての2着に健闘させ、20頭中20番人気で勝利したエリザベス女王杯と同じ距離条件で、京都の観衆を再び騒然とさせた[32]

1991年の高松宮杯ではダイタクヘリオスに騎乗し、梅田康雄調教師からは最終コーナーで先頭に立ち、差しのダイイチルビーを待たずに追い出す騎乗を指示される[33]。レースでは1枠1番からスタートして先行し、ハナをトーワルビーに譲って2番手を追走[34]。トーワルビーはかかってハイペースを作り、第3コーナーで失速すると、ダイタクヘリオスは代わって先頭に立つ[34]。ダイタクヘリオス先頭、ダイイチルビー2番手で最終コーナーを通過すると、直線では作戦通り、すぐに仕掛けてリードを作る[34]。対するダイイチルビーが外からの末脚でビハインドを埋めにかかり[34]、2頭の差が無くなって全く並んだところが決勝線であったが、写真判定により、ダイタクヘリオスのハナ差先着が認められた。ダイタクヘリオスは前走の安田記念と正反対のワンツーフィニッシュで重賞3勝目となり、加用にとっては1989年のウインターステークス・マルブツスピーリア以来1年半ぶりの重賞勝利であった[34]

1992年にはマルカアイリスで小倉3歳ステークスを制し最後の重賞勝利[35]を挙げ、阪神3歳牝馬ステークスでは1番人気に支持されるも16位降着に終わった[36]

最終騎乗日となった1993年2月28日の阪神では第1競走4歳未勝利・セントエイカンで最後の勝利を挙げ、第7競走4歳新馬・ロイヤルモナーク(10頭中4着)を最後に現役を引退[37]

調教師時代

1994年、栗東トレーニングセンターに加用正厩舎を開業。同年6月11日に札幌競馬場第9競走でパリスケイワンが勝利し、延べ24頭目で初勝利を挙げる。1996年、関屋記念エイシンガイモンが制し、JRA重賞を初勝利。初年度から徐々に勝利数を伸ばしており、2006年、2007年にはそれぞれ31勝を挙げ、2007年度には関西の優秀調教師賞を受賞した。2014年のJBCスプリントドリームバレンチノで勝利し、G1級競走初制覇[38]

2024年3月5日をもって定年のため、調教師を引退した[39]

通算成績

騎手成績

通算成績 1着 2着 3着 4着以下 騎乗回数 勝率 連対率
平地 552 560 545 3,780 5,437 .102 .205
障害 7 11 8 30 56 .125 .321
559 571 553 3,810 5,493 .102 .206
日付 競走名 馬名 頭数 人気 着順
初騎乗 1976年3月6日 4歳未勝利 カクノホープ 9頭 2 2着
初勝利 1976年3月7日 須磨特別 カクノヤシマ 7頭 7 1着
重賞初騎乗 1976年3月6日 阪神障害S(春) マルブツビート 13頭 12 9着
重賞初勝利 1980年1月13日 シンザン記念 ノトダイバー 11頭 5 1着
GI級初騎乗 1978年4月9日 桜花賞 マンジュデンミキコ 21頭 8 13着

主な騎乗馬

※括弧内は加用騎乗時の勝利重賞競走。

  • ノトダイバー(1980年シンザン記念・きさらぎ賞、1981年, 1982年京阪杯)
  • ウエスタンジョージ(1980年愛知杯、1981年金杯 (西)・中日新聞杯)
  • マルブツウイナー(1982年鳴尾記念)
  • マルブツサーペン(1984年毎日杯、1985年京阪杯)
  • ダイゴアルファ(1987年毎日杯)
  • ヒデリュウオー(1987年中日スポーツ賞4歳ステークス)
  • ゴルデンビューチ(1987年小倉記念
  • ダイナカーペンター(1988年阪神大賞典、1989年京都記念)
  • トウショウアロー(1989年中日新聞杯)
  • マルブツスピーリア(1989年ウインターステークス)
  • ダイタクヘリオス(1991年高松宮杯)
  • ロングタイトル(1991年神戸新聞杯
  • マルカアイリス(1992年小倉3歳ステークス)
その他
  • レインボーアンバー

調教師成績

日付 競馬場・開催 競走名 馬名 頭数 人気 着順
初出走 1994年4月23日 4回阪神1日4R 4歳未勝利 ロングシリウス 14頭 12 12着
初勝利 1994年6月11日 1回札幌1日9R 北斗賞 パリスケイワン 7頭 6 1着
重賞初出走 1994年5月8日 4回阪神6日11R 京都4歳特別 パリスケイワン 14頭 13 11着
重賞初勝利 1996年8月4日 2回新潟8日11R 関屋記念 エイシンガイモン 12頭 1 1着
GI初出走 1995年12月10日 5回中山4日11R 朝日杯3歳S エイシンガイモン 12頭 2 2着
GI初勝利 2014年11月3日 10回盛岡3日9R JBCスプリント ドリームバレンチノ 16頭 2 1着

主な管理馬

※括弧内は当該馬の優勝重賞競走、太字はGI級競走。

受賞

主な厩舎所属者

※太字は門下生。括弧内は厩舎所属期間と所属中の職分。

参考文献

  • 木村幸治「JOCKEY ZOOM UP24 加用正 - 東京ナンバーのBMW」(『優駿』1987年9月号〈日本中央競馬会、1987年〉所収)
  • 木村幸治『調教師物語』(洋泉社、1997年)ISBN 4896912926

脚注

  1. ^ a b c d e f g 【明日への伝言】加用正師、運命だった瀬戸口厩舎からデビュー「厳しい半面人情に厚かった」 - 競馬 : 日刊スポーツ”. www.nikkansports.com. 2025年10月17日閲覧。
  2. ^ a b 加用正の騎手成績|競馬データベース - netkeiba.com”. netkeiba.com. 2025年10月17日閲覧。
  3. ^ 加用正の騎手成績|競馬データベース - netkeiba.com”. netkeiba.com. 2025年10月17日閲覧。
  4. ^ 加用正の騎手成績|競馬データベース - netkeiba.com”. netkeiba.com. 2025年10月17日閲覧。
  5. ^ a b c 加用正”. netkeiba.com. 2025年10月17日閲覧。
  6. ^ JRAニュース「2011年度『中央競馬関西放送記者クラブ賞』は該当者なし」”. 日本中央競馬会 (2011年12月25日). 2025年10月17日閲覧。
  7. ^ ロングホーク (Long Hawk)”. netkeiba.com. 2025年10月17日閲覧。
  8. ^ 1977年05月01日のレース情報”. netkeiba.com. 2025年10月17日閲覧。
  9. ^ 加用正の騎手成績|競馬データベース - netkeiba.com”. netkeiba.com. 2025年10月17日閲覧。
  10. ^ 京都記念|1978年2月19日”. netkeiba.com. 2025年10月17日閲覧。
  11. ^ グリーンシャトー (Green Chateau)”. netkeiba.com. 2025年10月17日閲覧。
  12. ^ 北橋修二の調教師成績|競馬データベース - netkeiba.com”. netkeiba.com. 2025年10月17日閲覧。
  13. ^ 北橋修二の調教師成績|競馬データベース - netkeiba.com”. netkeiba.com. 2025年10月17日閲覧。
  14. ^ ラフオンテース (Lafontaice)”. netkeiba.com. 2025年10月17日閲覧。
  15. ^ 加用正の騎手成績|競馬データベース - netkeiba.com”. netkeiba.com. 2025年10月17日閲覧。
  16. ^ a b ノトダイバー (Noto Diver)”. netkeiba.com. 2025年10月17日閲覧。
  17. ^ a b ウエスタンジョージ (Western George)”. netkeiba.com. 2025年10月17日閲覧。
  18. ^ 1981年11月22日のレース情報”. netkeiba.com. 2025年10月17日閲覧。
  19. ^ 鳴尾記念|1982年4月18日”. netkeiba.com. 2025年10月17日閲覧。
  20. ^ 瀬戸口勉の調教師成績|競馬データベース - netkeiba.com”. netkeiba.com. 2025年10月17日閲覧。
  21. ^ ノトパーソ (Noto Perso)”. netkeiba.com. 2025年10月17日閲覧。
  22. ^ 京都大賞典|1986年10月5日”. netkeiba.com. 2025年10月17日閲覧。
  23. ^ レース名[中日スポーツ賞4歳ステークス]のレース検索結果|競馬データベース - netkeiba.com”. netkeiba.com. 2025年10月17日閲覧。
  24. ^ db.netkeiba.com/horse/select.html&id=1977106464&year=0000&mode=ge&type=sire&page=5”. netkeiba.com. 2025年10月17日閲覧。
  25. ^ a b 『優駿』1997年3月号 89頁
  26. ^ 『優駿』1988年5月号 89頁
  27. ^ 『優駿』1988年5月号 127頁
  28. ^ 『優駿』1988年5月号 128頁
  29. ^ 京都記念|1989年2月19日”. netkeiba.com. 2025年10月17日閲覧。
  30. ^ 菊花賞|1989年11月5日”. netkeiba.com. 2025年10月17日閲覧。
  31. ^ サンドピアリス (Sand Peeress)”. netkeiba.com. 2025年10月17日閲覧。
  32. ^ [競馬タイムトラベル]1991年京都記念・プリンスシン”. uma-furi.com. 2025年10月17日閲覧。
  33. ^ 『優駿』2003年7月号 61頁
  34. ^ a b c d e 『優駿』1991年9月号 148-149頁
  35. ^ 加用正の騎手成績|競馬データベース - netkeiba.com”. netkeiba.com. 2025年10月18日閲覧。
  36. ^ 加用正の騎手成績|競馬データベース - netkeiba.com”. netkeiba.com. 2025年10月18日閲覧。
  37. ^ 加用正の騎手成績|競馬データベース - netkeiba.com”. netkeiba.com. 2025年10月18日閲覧。
  38. ^ “【JBCスプリント】岩田、史上初の同日GI2勝!”. サンスポ. (2014年11月4日). http://race.sanspo.com/nationalracing/news/20141104/nranws14110405060017-n1.html 2014年11月4日閲覧。 
  39. ^ 調教師7名・騎手1名が引退日本中央競馬会、2024年2月6日配信・閲覧
  40. ^ ゼルトザーム - 競走馬データtop”. 競馬予想のウマニティ. 2025年2月20日閲覧。

関連項目





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