判例集未登載の判例
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/12/08 18:25 UTC 版)
多くの裁判は判例集に掲載されない。例えば、カリフォルニア州の中間上訴裁判所(カリフォルニア州控訴裁判所)の意見のうち、掲載されるのは1年あたりその7%にすぎない。これは、主として裁判官は先例として意義のある裁判についてのみ、判例集への掲載を認めるためである。裁判所に持ち込まれる(法的には)意味のない事件は膨大な数にのぼるため、余分な事件は落とすのは重要なことである。 判例集未登載判例を引用するにあたっては、いくつかの方法がある。 判例集未登載判例で、電磁的なデータベースにも収録されていないもの、又は、ごく最近の判例であって「まだ」判例集やデータベースに掲載されていないものについては、裁判を行った裁判所が付したドケット番号によって特定することを要する。Groucho Marx Prods. v. Playboy Enters., No. 77 Civ. 1782 (S.D.N.Y. Dec. 30, 1977) :ニューヨーク州南部連邦地方裁判所の裁判。必要な場合、ドケット番号と裁判日により、裁判所が保管している記録からハードコピーを入手することが可能である 控訴裁判所の裁判のうち「連邦判例集」に「登載されている」と考えられているものは一部にすぎないが、ウェスト社は、公式には「未搭載」とされているすべての判例を「Federal Appendix(F. App'x)」(連邦判例集追補版)として別にまとめている。 判例のうち、意図的に公式には未搭載として扱われているが、レクシスネクシスやウェストローといったコンピュータ・データベース上はしばしば登載されているものとして扱われるものがある。これらについては、当該事件の年、データベースの略称、データベース上の通し番号(年ごとにデータベースに収録された順番に1から番号が付けられる)に基づく独自の引用方式がある。また、オンラインのデータベースには、当該判例のドケット番号及び裁判日も収録されている(伝統的な紙の判例集を引用することが推奨されるため)。データベース上の判例の引用方式は、以下のようなものである。Fuqua Homes, Inc. v. Beattie, No. 03-3587, 2004 WL 2495842 (8th Cir. Nov. 8, 2004):ウェストローのデータベースにおける第8巡回区連邦控訴裁判所の判例の場合。ドケット番号(No. 03-3587)、データベースの略称(WL)、裁判日、データベース上の通し番号(2495842)が示されている。 Chavez v. Metro. Dist. Comm'n, No. 3:02CV458(MRK), 2004 U.S. Dist. LEXIS 11266 (D. Conn. June 1, 2004):コネチカット州連邦地方裁判所の判例。ドケット番号(No. 3:02CV458(MRK))、裁判日、データベース略称(U.S. Dist. LEXIS、連邦地方裁判所判例を収録したレクシスネクシスのデータベースを意味する)、及びデータベース上の通し番号(11266)が記載されている。 裁判所によっては、先例として判例集に登載されていない判例を引用することを禁じる制度をとっているところもある(カリフォルニア州や、第2、7及び9巡回連邦控訴裁判所等)。また、特定の状況のもとでのみ、判例集に登載されていない判例の引用を認める制度をとっているところもある。例えば、ケンタッキー州では、2003年1月1日以降の判例で、「裁判所において論点を検討するにあたり十分な判例が判例集に存在しない」場合に限り、判例集未登載判例の引用が許されるとしている。2004年から2006年にかけて、連邦の裁判官らにより、「Federal Rules of Appellate Procedure(FRAP)」(連邦上訴事件手続規則)を改正し、巡回裁判所において先例として判例集に掲載されていない判例を先例として引用することを認めるか否かについての議論がなされた。2006年、最高裁判所は、数百人にのぼる裁判官や弁護士の反対があったものの、FRAPを改正し、その32条1項により、判例集に掲載されていない判例の引用を認めるとした。この規則は、2007年1月から施行されている。
※この「判例集未登載の判例」の解説は、「判例引用」の解説の一部です。
「判例集未登載の判例」を含む「判例引用」の記事については、「判例引用」の概要を参照ください。
- 判例集未登載の判例のページへのリンク