判例法解釈の問題点
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/05 02:16 UTC 版)
判例を法源としてどれだけ尊重し、判例法としての事実上又は法的な拘束力を認めるかは、法的安定性を脅かすことのないよう、かつ個々の事案についての具体的妥当性を実現させるという、矛盾・対立する要請をいかに調和させるかの問題でもある(→#立法的解釈の問題点)。 特にイギリスでは、法的安定の確保のために上級審の判例遵守の原則が立てられている。もっとも、1966年には、厳格な先例拘束の原則が緩和され、判例の変更が可能になった。 これに対し、アメリカ法においてはイギリスのような中世以来の判例法の伝統を欠いており、フランス法系のルイジアナ州に典型的にみられるように各州の法制度の独立性が高いこと、訴訟が頻発し判例の蓄積が極めて膨大という社会的事情などと相まって、判例の拘束力は相対的に弱いものとなっている。 英米法では、勝訴・敗訴や違憲・合憲といった判決の結論それ自体や、判決文が言及する一般論の全てが法源としての拘束力を持つものとは考えられておらず、一般に、判例とは判決の結論を導くうえで重要な意味のある法的理由付け、即ち判決理由のことを言い、そのような意味を持たない傍論との区別の手法が発達している。 これに対し、大陸法においては直接の法源とはならないが、成文法を補充するものとして、事実上の法源としての一定の拘束力を認めることができる。この範囲については、英米法の国々との比較においてさえ最高裁判所の判例をより強く重視する傾向の強い日本法においても、英米法と同様判例はレイシオ・デシデンダイのみに限られると解するのが通説であるが、実際には必ずしも厳密に区別されて運用されているわけではなく、最高裁判所の傍論もまた下級審の裁判実務に指導的な役割を果たし、事実上の法源として機能する事が少なくない。
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