刑法上の有価証券
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/17 08:09 UTC 版)
刑法においては、有価証券偽造等の罪が定められており、有価証券の偽造・変造やその行使などが処罰の対象とされている。しかしながら、有価証券の意義については、条文上、「公債証書、官庁の証券、会社の株券」が例示されているに過ぎず、明文の定義はない。したがって、規定の趣旨に従って解釈がなされている。 判例によると、「財産上の権利が証券に表示され、その表示された権利の行使につきその証券の占有を必要とするもの」とされる(大判明治42・3・16刑録15輯261頁、最判昭和32・7・25刑集11巻7号2037頁、最決平成3・4・5刑集45巻4号171頁など)。また、日本国内で発行され、又は日本国内で流通するものに限られる(大判大正3・11・14刑録20輯2111頁)。私法上の有価証券とは異なって流通性は要求されない(前掲最判昭和32・7・25)。具体的には、乗車券(普通、定期)、劇場の入場券、商品券、クーポン、タクシーチケット、宝くじ、競輪の車券、競馬の勝馬投票券などが含まれるとされる。 テレホンカードを含むプリペイドカードのように電磁的記録によるものが有価証券であるかについては事件ごとに判決が異なり、争いがあったが、最終的に示された判例ではテレホンカードについてこれを肯定し、有価証券偽造等の罪の対象となることを肯定した。その後2001年(平成13年)の刑法改正により支払用カード電磁的記録に関する罪が新設されたため、現在は、本罪によって処罰されることとなる。 この他には握手会整理券が「ネットオークションで売買の対象とされている事から財産価値は明らかで有価証券と認められる」とした判例がある(東京地裁 2010年(平成22年)8月25日)。 なお、刑法上の有価証券に該当しないものとしては、預貯金通帳や無記名定期預金証書やゴルフクラブ入会保証金預託証書(いずれも証拠証券にすぎない。私文書偽造による処罰の対象)、下足札や手荷物預り証(いずれも免責証券にすぎない。私文書偽造等による処罰の対象)、印紙や郵便切手(いずれも金券。ただし、印紙犯罪処罰法や郵便法による処罰の対象)などがある。
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