分類と学名表記
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/09 03:34 UTC 版)
2005年現在、サルモネラ属は生物学的性状からS. entericaとS. bongoriに分類され、さらにS. entericaは6亜種に分類される。また、血清学的には、細胞壁リポ多糖体であるO抗原と、鞭毛タンパク質であるH抗原の組み合わせで2,500種類以上に分類される。 サルモネラ属の分類は細菌の中でも最も混乱の大きいものの一つであり、分類と学名表記を統一するための裁定が頻繁に行われている。古典的なサルモネラ属の分類は、O抗原とH抗原の組み合わせに基づいたもので、1926年にWhiteが提唱し後にKaffmannが拡充した、Kaffmann-Whiteの抗原表に従って行われてきた。この旧分類では、例えばサルモネラ属のうちO9:Hdという抗原型の組み合わせを持つものをS. typhi(旧和名:腸チフス菌)という一つの生物学的種として扱っていた。しかしこのKaffmannらの分類は、抗原型が異なる細菌は別の生物種として命名できるという考えに従っていたため、その後、細菌学分野全体として生化学的、遺伝子学的分類が行われるようになると齟齬を生じる結果になった。そこで1985年には生物学的分類と整合させることを目的にS. choleraesuisの1属1種とすることが提案され、2002年にはS. entericaの1属1種とすることが正式菌名として承認された。さらにその後、2005年にはS. entericaとS. bongoriの1属2種とし、entericaの下に6亜種を設ける分類法が裁定された。 この分類法によると、チフス菌やパラチフス菌、食中毒性サルモネラなどの病原性サルモネラは、ほとんどS. enterica subsp. entericaに属する。この亜種の中で、さらにKaffmann-Whiteの分類に準じた抗原性の違いに基づく、血清型 (serovar) による分類がなされており、例えばチフス菌の正式な学名は「Salmonella enterica subspecies enterica serovar Typhi」となるが、subspecies entericaを省略して、S. enterica serovar Typhiと略記してもかまわないことにされている。なお正式に認められたものではないが、これをS. Typhiと略記することもしばしば行われており、本項目でも以下この略記法に従って表記する。また研究者によっては旧分類名である“S. typhi”や“S. choleraesuis”を用いる人も未だに存在している[誰?]。 2005年1月に裁定された分類ではサルモネラは以下のように分類されている。血清型 (serovar) については特に代表的なものだけを記載した。 Salmonella entericasubsp. entericaserovar Choleraesuis ブタコレラ菌 serovar Typhi チフス菌 serovar Paratyphi A パラチフス菌 serovar Paratyphi B serovar Paratyphi C serovar Typhimurium ネズミチフス菌 serovar Enteritidis 腸炎菌 supsp. salamae supsp. arizonae supsp. diarizonae supsp. houtenae supsp. indica Salmonella bongori これらとは別に、2005年にS. subterraneaが記載されたが、2010年にサルモネラ属よりもむしろEscherichia hermanniiに近いことが報告され、2016年には非合法ながら"Atlantibacter subterranea"という名称が提案されている。 Salmonella subterranea
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