分生子形成型
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/04/13 06:49 UTC 版)
分生子がどのようにして分生子柄からできるかを見ると、いくつかの類型に分けられる。そのような分生子の作られ方を分生子形成型といい、不完全菌の分類では重視されている。 不完全菌は、完全世代が見られないので、類縁関係を反映した分類をすることが難しく、いわば見かけ上の特徴だけで分類せざるを得ない。19世紀末に作られたサッカルドーの分類では、糸状不完全菌を、分生子柄が集団を作るかどうか、分生子柄や分生子が着色しているかどうか、分生子の細胞数といったことで上位分類群を作ってあった。これは、整理するには便利ではあるが、極めて機械的な分類である。 いくら不完全菌であっても、分類はやっぱり類縁関係を反映したものであるべきなので、どのような特徴が重要かについて検討が行われた結果、分生子形成型が重要であることが判明し、重視されるようになった。分生子形成型をあらわす用語は、研究者や時代によって出入りがあるが、よく使われるのは以下のようなものである。 分節型:分生子柄が、一定の長さに区分され、それぞれが分生子になる。アレウリオ型:分生子柄先端が隔壁で分かれ、その細胞が発達して分生子になる。出芽型:分生子柄先端(など)から、出芽によって分生子を作る。シンポデュロ型:先端で分生子を出芽した分生子柄がその側面からのびてその先端で分生子を出芽、これを繰り返す。ポロ型:分生子は出芽によって作られるが、柄の出芽部分の周りが厚くなっている。フィアロ型:分生子を出芽するための独特の紡錘状細胞がある。 実際には、分生子柄の形や、作られた分生子がそれからどうなるかによって、見かけはずいぶん変わる。たとえばアオカビ・コウジカビはどちらもフィアロ型だが、これらは、新しい分生子は古い分生子を前に押し出して、次々と作られる。すると、分生子形成細胞である紡錘状細胞フィアライド(phialide)の上に分生子の数珠ができる。アオカビでは枝分かれで束になったフィアライドの上に鎖が並んで、筆先か箒のようになる。コウジカビでは柄の先の膨らみの表面にフィアライドが並ぶので、全体の姿は分生子の鎖を並べた針山のようになる。また、トリコデルマもフィアロ型だが、分生子はフィアライド先端の粘液の中に出て、次々作られる分生子はそこに塊を作る。グリオクラディウムでは、アオカビによく似た分生子柄の分枝の上に、トリコデルマのように分生子を作るので、分生子柄全部を覆うような大きな分生子の塊ができる。 分生子形成型の研究が進むにつれ、細部で異なったものや、中間的なものも多数見つかり、今ではこのような分類もすっきりとは行かなくなっている。また、分生子の形成過程にも、電子顕微鏡による微細構造の研究が進み、分生子の細胞壁の由来等、検討が進められている。それらの情報による、分生子形成型そのものの見直しも進められている。他方で、分子遺伝学的手法によって、不完全世代と完全世代を結びつける試みが行われるようになったことから、その結果との引き合わせも進められている。
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