円錐形のエナン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/02/19 15:08 UTC 版)
エナンが服飾史に登場するのは1430年から特に1450年以降である。円錐の先が尖っているものもあれば、先が切り取られたように平たい形もあった。はじめは貴族の子女だけのものだったが、次第に普及し、特に帽子の先が平らな切形は一般に広まった。エナンの長さは30cmから45cmのものがふつうだが、資料によっては80cmと比較的高い形のものもみつかる。エナンにはヴェールー正式にはコアントワーゼ(フランス語: cointoise)というーがついているのが一般的である。たいていヴェールは帽子の先から女性の肩までかけられており、場合によっては地面まで降ろされていた。帽子の上から女性の顔にかかるようにしている例もみつかる。 エナンは後ろへ斜めにずらしてかぶるものだった。綿糸か針金など軽い素材のうえに薄い織り地を貼ってつくられていたが、その構造について詳しいことはほとんどわかっていない。フランスのコロネットを思わせる、眉の一部や左右どちらかの肩にかかるような布の飾り垂れがついているエナンもよくみられる。ひたいのところに短い飾りのバンドやリボンがついているものも非常に多い(右図)。これは帽子の位置をあわせるための細工であり、おそらく風が吹いたときに動かないようにする目的もあった。 当時は、額を広くするために生え際の毛を抜いたり剃ることが流行していた。髪の毛は頭の形にそってきつく束ねられ、たいてい帽子のなかにすっぽりと隠された(おそらくヴェールは片側を髪の毛に結んで巻き付け、反対側を円錐の穴から引き出していた)。しかしエナンの後ろで長い髪を結ばずにいる肖像画もみつかっている。 今日では、エナンはおとぎ話に登場する王妃が身につける典型的な衣装の一つとなっている。装飾写本に描かれる王妃や女王がかぶる小さな王冠は、まわりにつばがついているか、エナンの先に載せられているかどちらかである。例えば、ブルゴーニュ公国の女公マーガレット・オブ・ヨークが1468年の結婚式典で身につけたごく小さな王冠などがまさにそれである(アーヘン大聖堂の宝物館に収蔵されている)。
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