内務省式改良便所
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/10 17:44 UTC 版)
1927年に内務省衛生局実験所から公表されたもの。消化器系の伝染病や寄生虫病対策として研究され考案された。 それによれば、構造は、コンクリートの密閉式の便槽、大便器、両者を連結する陶製円筒、小便器から成る。便槽は中隔壁で5槽に分かれ、内面は防水モルタル塗り。第1槽に投入された糞尿は嫌気性菌によって腐敗液化し、第2・第3・第4の便槽を経て第5槽に流入し、第5槽に溜まった最も腐熟の進んだものが汲み取られる。糞尿は投入されてから汲み取られるまでに少なくとも1か月間は便槽内で腐熟するように、使用者の人数に応じて便槽の大きさは考慮する。糞尿は空気から遮断され放置されれば、その中の嫌気性菌によって固形汚物は腐敗液化し、病原菌、寄生虫卵などは嫌気性菌によって死滅するから、糞尿は嫌気性菌によって長く腐熟させるほど安全である。糞尿中の病原菌、寄生虫卵が完全に死滅するのに要する時間は研究の結果、内務省改良便所の場合、汚物投入後1か月以上経過したのち汲み取るように便槽の大きさは定められた。便槽内に投入された糞尿は空気との接触をできるだけ少なくして嫌気性菌を繁殖させるために大便器と便槽内液面とを陶製円筒で連結させ、便槽は汲み取り口を除けば密閉され空気の出入りを防ぐ構造である。汲み出されるものは完全に液化し、病原菌は殺滅されているからただちに肥料として耕地などに使用することができる。 大きさは、10人として、長さ2.5 m内外、幅約1 m、深さ約1.3 m(深いほど効果は大きい)。壁の厚さは底面9 - 12 cm、側壁および被蓋7 - 9 cm、中隔4 - 6 cm。内径は幅、水深各室とも約1 m、長さ第1槽0.6 - 0.9 m、第2槽0.3 m、第3槽および第4槽0.2 m、第5槽0.6 m内外。容積(便槽が十分に満たされた場合の包擁容積)は第1槽0.5 - 0.7立方メートル、第2槽0.3立方メートル、第3槽および第4槽0.2立方メートル、小計1.14 - 1.39立方メートル有効容積、第5槽約0.3立方メートル汲み取り室容積。ただしなるべく広いほうが便利である。1家族10人、1人1日平均1 ℓの排泄量として第1槽から第4槽に約120 - 150日の糞尿を貯えることができる。すなわち約4ヶ月 - 5ヶ月後に汲み出される。第1槽と大便器との連結である糞尿落込口は内径約1 mの土管。その下端は汚物面に接触させない。大便器には蓋をする。小便器の流口は大便落込土管の上方を開口させる。汲み取り口は第5槽の上方にマンホールを付ける。その他に非常掃除口、換気装置などを付ける。
※この「内務省式改良便所」の解説は、「汲み取り式便所」の解説の一部です。
「内務省式改良便所」を含む「汲み取り式便所」の記事については、「汲み取り式便所」の概要を参照ください。
- 内務省式改良便所のページへのリンク