債権執行
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/04 22:14 UTC 版)
債権執行とは、債務者が第三債務者に対して有する「債権」(ここでは、金銭の支払又は船舶若しくは動産の引渡しを目的とする債権(動産執行の目的となる有価証券が発行されている債権を除く。)を意味する、)に対して行う強制執行である。実務上、債務名義の実現方法として多数を占める執行手続であり、債務者が有する給料債権や、預貯金の差押えが代表例である。給料債権のうち、政令で定める範囲は生活費として差押えが禁止され、これを超える部分のみを差し押えることができる。 債権差押命令 まず、執行裁判所が債権差押命令を発令し、債務者に対し、第三債務者からの債権の取立て等を禁止するとともに、第三債務者に対し、債務者に対して弁済することを禁止する(143条、145条)。つまり、債務者の第三債務者に対する債権は凍結される。 取立て 債務者に対して差押命令が送達された日から1週間を経過したときは、債権者は、第三債務者から、直接債権を取り立てることができる(155条)。たとえば、給料債権に対する債権執行であれば、債権者は、債務者の勤務先(第三債務者)から、直接、差押禁止債権を超える部分の支払を受けることができる。 複数の債権者が差し押さえた場合でその合計額が債権額を超える場合には、第三債務者は供託をしなければならない(156条2項。義務供託という)。この場合、競合する債権者は、実体法上の優劣(先取特権等)がある場合にはそれに基づいて、同順位の債権者については債権額に応じて按分した額の配当を受ける。債権者が競合しない場合でも、第三債務者は供託することができる(156条1項。権利供託という)。供託をした場合には、「事情届」という書面により執行裁判所にその事情を届けなければならない(156条3項)。 転付命令 券面額のある債権を差し押さえた債権者は、執行裁判所に対し、転付命令の申立てをすることができる(159条1項)。転付命令は券面額のある債権に限られるので、期限未到来の債権や条件付債権について転付命令を得ることはできない。転付命令が発せられると、債務者の被差押債権は券面額で差押債権者に移転し、債権額に応じた按分配当ではなく、被差押債権から独占的に弁済を受けることができる。その代わり、「券面額で」移転するため、100万円の債権であれば、実際には第三債務者の無資力のため10万円しか回収できなかったとしても、100万円の弁済を受けたものとして扱われる。そのため、第三債務者の資力に不安のない銀行預金や法務局供託金に対して転付命令が申し立てられることが多い。 譲渡命令(161条) 特許権など債務者名義の財産権を債権者名義に譲渡させることができる。もっとも、実務上はあまり行われない。
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