債権との対比
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/08 21:07 UTC 版)
物権とは、物を直接排他的に支配する権利をいい(対世的効力)、債権のように個人間の契約等に基づいて権利関係を自由に規定できるが、その効果は相手方にしか及ばない(対人的効力)とは異なり、非常に強い権利であって、それを認めるには、民法に規定された10の権利など、法律上で規定することが求められる。また、物の一部に対して物の全体とは別に物権が成立するということはなく、複数の物に一つの物権が成立することもないとされる。このような考え方を、「一物一権主義」という。 債権は「契約自由の原則」(私的自治の原則)から、同一物を目的として複数の設定が認められ、それらの優劣は、専ら債務不履行による契約当事者間の関係によって解決されるべき問題なので、公序良俗、強行法規に違反しない限り、同一物を目的とする複数の債権設定は可能だが(例. 二重売買は、各々の契約自体が無効になるものではなく、一方を履行すれば、もう一方は履行不能となり、債権法的解決が図られる)、物権の設定は、例えばあるものに関する所有権が複数存在したのでは、所有権における排他的支配という権利の本質に反することになるから、これを解決する必要が生じる。この方法の一つが公示であり、同一物に関し、物権を主張する者が複数いる場合、その対抗関係は公示の有無、先後によって解決されることになる。 物権の権利性は、民法175条と続く176条の規定からも分かるように債権的手続きによって表出するから、債権的性質によって補完され、また、相対化もされる。このことは、例えば、不動産における物権変動論に見ることができる。買主は権利譲渡によって排他的支配権という絶対性を予定するが、売主の権利多重譲渡によってその予定は可能性へと相対化される。
※この「債権との対比」の解説は、「物権法」の解説の一部です。
「債権との対比」を含む「物権法」の記事については、「物権法」の概要を参照ください。
- 債権との対比のページへのリンク