健常人でみられる結晶
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/24 20:50 UTC 版)
正常な結晶尿pH色調形態意義シュウ酸カルシウム どのpHでも形成される。 無色 二水塩は正八面体または封筒状。一水塩は卵円形またはダンベル型 正常。一般的。ヒトの尿で最も多く見られる結晶。腎結石の主成分(尿路結石の80%)。 健常人でもシュウ酸の多い食物(トマト、アスパラガス)摂取後にみられる。 通常は意義が少ないが、急性腎障害でシュウ酸カルシウム結晶が見られたら、エチレングリコール中毒を考慮する。 炭酸カルシウム 基本的にはアルカリ性尿。 無色 小型の顆粒、球、ダンベル型 正常。臨床的意義なし。まれ。 塩酸や酢酸を加えると発泡。 無晶性リン酸塩 アルカリ性ないし中性尿で見られる 無色 無晶性、顆粒状(無晶性尿酸塩に似ているが無色) 正常。一般的。 尿酸と異なり60度に加熱しても溶解しない。 鏡検では無晶性尿酸塩と区別できないが、アルカリ性ないし中性尿で見られること、加温で溶解しないこと、で区別できる。 リン酸カルシウム 中性を中心にどのpHでもみられる。 無色 二塩基塩はロゼット状または星状の薄いプリズム状。プリズムの一端は細い。まれに針状。一塩基塩Ca(H2PO4)2は 不規則な顆粒状のシート状または板状 正常。臨床的意義なし。珍しい。 腎結石に関連することがある。 リン酸アンモニウムマグネシウム(ストルバイト) アルカリ性ないし中性尿で見られる。 無色 棺桶の蓋状(3面から6面のプリズム状)、まれに平らなシダの葉様 正常。 一般的。 腎結石の成分(尿路結石の約5%)。正常の尿では溶解しているが、尿路感染症でアンモニアが産生されpHが上昇すると析出する。 臨床的意義は低いが、尿がアルカリ性になるような尿路感染症で出現して腎結石形成に関与するとされる。 尿酸アンモニウム アルカリ性ないし中性尿で見られる(pH5.7以上)。 暗黄褐色 スジ状模様の球状または針状体、「サンザシの実」「刺のあるリンゴ」。 正常。古い尿で一般的。新鮮尿ではまれだが、万一新鮮尿で見られた時は、生体内で生成した結晶が腎尿細管を損傷する原因となるので、臨床的意義がある。 アルカリ尿では、尿路感染や採取後時間の経過した尿にみられ、意義に乏しい。 ロタウイルス胃腸炎で本結晶を認めた場合は、生成した結石が腎不全の原因となるため、尿路結石予防の処置をとらねばならない。 ある種のサルファ剤の結晶と形状が似ているので注意を要する。 尿酸ナトリウム 酸性尿(pH5.7以上) 無色〜淡黄色 細長い鉛筆状のプリズム型、針状 正常。臨床的意義なし。 酸性尿酸塩 pHが中性から弱酸性で見られる(pH5.7以上) 黄茶色 球状、尿酸アンモニウムに似ている。 正常。臨床的意義なし。 新鮮尿では稀、古い尿でよく見られる(特にpHが高い場合)ので保存の不備も考慮。 無晶性尿酸塩 中性から酸性尿(pH5.7以上) 無色〜黄茶色 無晶性、顆粒状 正常。臨床的意義なし。一般的。 肉眼的に橙桃色の沈殿。 冷蔵で沈殿しやすいが、60度加熱で溶解。 鏡検では無晶性リン酸塩と区別できないが、酸性尿で見られること、加温で溶解すること、で区別できる。 尿酸(pH5.7以下) 酸性尿のみ 無色〜黄茶色(厚さにより色調は変化) 多形態性。平たい、ダイアモンド、レモン状菱型、層状、ロゼット状。 通常は意義は少ないが、急性腎障害で大量の尿酸結晶が見られたら、腫瘍崩壊症候群を考える。 化学療法、痛風。
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