侵食作用による地形
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/27 03:31 UTC 版)
a 圏谷 圏谷とは、山地の屋根近くの谷頭に形成された安楽椅子状にくぼんだ谷地形で圏谷氷河の侵食でつくられたものである。典型的な圏谷では、谷頭と側方の急斜面は一般に崩壊し、谷底は氷河によって滑らかにけずられて盆地状をなし、盆地の出口には弓なりに延びる堤防状のモレーンや岩盤のしきいがある。日本では圏谷よりもドイツ語のカール(Kar)がよく使われている。1902年、当時の東京大学の地理学教室の創設者である山崎直方が飛騨山脈北部にカールを発見したことが、この言葉の普及の原因になったようである(山崎カール)。 b トラフ谷(U字谷) トラフは細長い箱、ふね、細長い窪地を意味し、谷氷河の侵食によってできた谷地形である。横断面がU字に近いことからU字谷ともよばれる。河川がつくるV字谷とはちがい、幅ひろい谷底と急傾斜の谷壁よりなることが特徴である。トラフ谷は三つのタイプに分けられ、(1) 山地にある氷河発生前の河谷に谷氷河が流れてつくられたもので、谷頭はしばしば圏谷に終わるもの、(2) アイスランド型とよばれるもので、氷冠や氷床の縁辺部が山地の稜線の低いところをしきいとして氷が塧れ出すとそこにこのタイプのトラフができ、塧流氷河谷やフィヨルドはこの典型的な例である。最後に、(3) 全通谷(スルー・ヴァレー)である。トラフ谷が山脈を貫通していて、現在はたがいに反対方向に流れる二つの河の源流部になっている。日本のトラフ谷は、北アルプスの槍沢が谷氷河によって形成された、といわれている。 c 流線型の突起 氷食谷底や氷床や氷冠におおわれていた岩盤上には、圏谷やトラフ谷にくらべはるかに小規模な氷食地形がみられる。氷河の流動方向に対し、上流側が丸みを帯び傾斜がゆるく、下流側に先細り傾斜が急で、しばしば氷河によって岩塊がもぎとられ凹凸になっており、このような特質から氷河の流れを知ることができる。また、群をなしていることが多い。羊背岩(羊群岩ともいう)とよばれるものはこの種の地形の一つで、節理の発達したゆか岩の表面に現れる流線型の地形で表面に氷河に取り込まれた岩屑による引っ掻き傷(擦痕)が残されている。
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