伝記的・文化史的研究
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「フランツ・カフカ」の記事における「伝記的・文化史的研究」の解説
カフカの伝記で最も早いものはマックス・ブロートによる『フランツ・カフカ』(1937年)である。親しい友人であったブロートが回想を交えつつカフカの一生を追ったものであるが、しかしシオニズム的・宗教的立場からカフカを偶像視する傾向が強くあった。その後クラウス・ヴァーゲンバッハがより客観的・実証的な伝記研究をおこない『若き日のカフカ』(1958年)とそれに補足した『カフカ』(1964年)を執筆した。前者は1912年までのカフカの生涯を追っており、特にブロートの伝記では手薄であった幼少期の解明に力を入れている。またヴァーゲンバッハの伝記では当時のプラハの状況を詳しく述べており、カフカとプラハとのつながりの深さを探求している。 その後、前述したハルムート・ビンダーによってさらに詳細な調査が行われ、カフカの生活史に関する細かなデータとともに当時の時代背景を詳述した『カフカとその時代』(『カフカ便覧』第1巻)が1979年に出版された。これに基づいて書かれたのがイギリスのロナルド・ハイマンによるカフカ伝(1980年)およびアメリカのエルンスト・パーヴェルによる『フランツ・カフカの生涯』(1984年)などである。その後の伝記としてはライナー・シュタッハによるカフカ伝(2002年)などがある。 近年ではカフカ自身の生活史とならび、カフカを取り巻く人物や当時の文化的状況の解明が進められており、現在も盛んに研究がなされている。前者の例としてはカフカの親族を広く調査しカフカの作品との関わりを論じたアンソニー・ノース『カフカ家の人々』(1988年)や、カフカの恋人たちを年齢に沿って記録したネイハム・N・グレイツァーの『カフカの恋人たち』(1986年)、後者の例としてはカフカが当時観ていたであろう映画を広告やプログラムなどから跡付けたハンス・ツィシェラー『カフカ、映画に行く』(1996年)などがあり、またカフカの作品を文化史的に位置づけつつ論じたものとしてマーク・アンダーソン『カフカの衣装』(1992年)のような研究がある。
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