人物志とは? わかりやすく解説

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人物志

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/16 19:41 UTC 版)

人物志』(じんぶつし)は、中国三国劉劭が書いた、人物の能力・品評・登用についての書物。

背景・内容

前後の時代背景として、郷挙里選九品官人法といった人材登用制度[1]曹操の唯才主義、月旦評[1]相人術、『漢書』古今人表、鍾会傅嘏の才性四本論(才能と徳性の「同・異・合・離」の論[2])、魏晋南北朝の清談貴族社会[1]先秦以来の尚賢論・君子論・性論などがあった。

劉劭は、魏明帝(曹叡)の下で実際に人事制度に携わった人物だった[3][4]

劉劭は本書で、平淡無味であらゆる変化に対応できる「中和」や、五徳をバランス良く兼ね備えた「中庸」の人物を高く評価した[5]

後世

西涼劉昞注釈がある[5]。『漢魏叢書』や『四部叢刊』に収録されている[5]

目録学においては『隋書経籍志以来、名家の書物に分類される。『隋書』経籍志で同じく名家に分類される書物として、曹丕撰『士品』(別名『士操』)[6]盧毓『九州人士論』、姚信『士緯』などがあるが、いずれもほぼ散佚している。『隋書』経籍志の名家の分類は、『七録』の分類を踏まえたものと推測される[7]

四庫提要』では本書を「名家に近いが儒家に反しない」と評しており、実際に儒家・道家法家などの思想が混在している[5]

平安時代日本でも本書は受容されていた。9世紀末の『日本国見在書目録』には、『隋書』経籍志と同様に名家の書物として本書が記載されている。また、1978年には京都府向日市長岡京宮跡から、「人物志三巻」と書かれた木製の板(籤牌)が出土している[8]。このことから、8世紀末の長岡京には巻子本の『人物志』が既にあったと推定される[8]。しかし、以降の日本に目立った受容は無かった[8]

20世紀日本では、関正郎・清水潔・多田狷介・岡村繁・東川祥丈・黒田亮らの研究がある[9]。中国では湯用彤牟宗三らの研究がある。

篇名

全3巻12篇。

  1. 九徵(九徴)
  2. 體別(体別)
  3. 流業
  4. 才理
  5. 才能
  6. 利害
  7. 接識
  8. 英雄
  9. 八觀(八観)
  10. 七謬
  11. 效難
  12. 釋爭(釈争)

日本語訳

  • 多田狷介『中国逍遥 ―『中論』・『人物志』訳註他―』汲古書院〈汲古選書〉、2014年。ISBN 9784762950681 (訳の初出は1979年-1980年)

外部リンク

脚注

  1. ^ a b c 高田淳 著「先秦「名家」の思想」、宇野精一中村元玉城康四郎 編『講座東洋思想4 中国思想3 墨家・法家・論理思想』岩波書店、1967年。ISBN 978-4130140546https://dl.ndl.go.jp/pid/2969196 231頁。
  2. ^ 髙橋康浩「曹魏における「才性四本論」の展開」『早稲田大学総合人文科学研究センター研究誌』第6巻、2018年、2頁。 
  3. ^ 髙橋康浩「劉劭『人物志』における「偏材」と「兼材」」『六朝學術學會報』第20号、六朝学術学会、2019年。 NAID 40021944614https://spc.jst.go.jp/cad/literatures/13051 8頁。
  4. ^ 安田登「第6章 『人物志』――才能や資質の見分け方」『三流のすすめ』ミシマ社、2021年。ISBN 978-4909394545 142f頁。
  5. ^ a b c d 林香奈 著「人物志」、尾崎雄二郎; 竺沙雅章; 戸川芳郎 編『中国文化史大事典』大修館書店、2013年、647頁。ISBN 9784469012842 
  6. ^ 渡邉義浩曹丕の『典論』と政治規範」『三國志研究』第4巻、2009年、98頁。 
  7. ^ 湯用彤「読《人物志》」『魏晋玄学論稿』人民出版社、1957年。 NCID BA45787095 11f頁。
  8. ^ a b c 多田 2014, はじめに.
  9. ^ 髙橋康浩「劉劭『人物志』における「偏材」と「兼材」」『六朝學術學會報』第20号、六朝学術学会、2019年。 NAID 40021944614https://spc.jst.go.jp/cad/literatures/13051 1f;13頁。



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