不正研究の内容
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/05 04:26 UTC 版)
「スコット・ルーベン」の記事における「不正研究の内容」の解説
実在しない患者を捏造し論文に記載していた 。 ファイザーから7万3千ドルの研究助成金を得て、手術後の疼痛への鎮痛薬・セレコキシブ(en:Celebrex)の効果を臨床試験(治験)したことになっている。50人の患者が、セレコキシブを投与され、50人の患者がプラセボを投与されたことになっているが、この臨床試験は実施されていなかった。そして、論文として出版したのである。下の不正論文リストの19-21番の論文のどれかまたは全部である(推定)。 ルーベンはエヴァン・エクマン(Evan F. Ekman)と共著で論文を出版したが、共著者になっているエクマン当人はルーベンの研究に参加していなかった。また、論文の共著者になっていることも知らなかった。下の不正論文リストの18-20番の論文のどれかまたは全部である(推定)。 ルーベンは、ファイザーから2002年から2007年までの5年間に多額の研究費を5回、援助された。しかも、彼はファイザー社に登録された有給講演者だった。それで、ファイザーに有利な研究論文を発表し、ファイザーに有利な講演を医療関係者にしていた。これらは、明らかに助成金バイアスのかかった利益相反違反である。ルーベンは、さらに、彼が研究していた鎮痛剤の安全性と有効性に関して、自分の捏造データを添えて、食品医薬品局に彼が研究した鎮痛剤の使用を制限しないようにとの手紙を書いていた。このように、ルーベンは、ファイザー社の鎮痛薬・ベクストラ(en: Bextra)、セレコキシブ(en:Celebrex)、プレガバリン(en:Lyrica)、それに メルク・アンド・カンパニー社の鎮痛薬・ビオックス(en:Vioxx)にとって都合の良い結果を捏造し、論文発表、講演、報告をしていた。不正発覚後、これらの鎮痛薬を使用しても患者に有害ではないとされたが、同時に、ルーベンが主張するほど治療に有効ではないともされた。さらに彼の論文は、ワイエス(en:Wyeth)社の抗うつ薬(en:Effexor)が鎮痛剤として使用できるとも主張していた。 虚偽データが含まれている論文10報を、学術誌『麻酔と無痛覚(en:Anesthesia & Analgesia)』に発表した。下の不正論文リストの1-4、7、14、15、19-20番の論文である。 『麻酔と無痛覚』の編集長で、米国・スタンフォード大学・麻酔科学教授であるスティーブン・シェーファー(en:Steven Shafer)は、「ルーベンは、自分の発見を大幅に拡大解釈していると述べている」。「彼の発見はこの分野に巨大な影響を及ぼしていた」ので、それらが不正研究だと判明した今、「ルーベン事件は麻酔科学の歴史のなかで最大の不正行為である」とも述べている。ポール・ホワイト(同じ学術誌のもう一人の編集者)は、ルーベンの研究が正しければ、数十億ドルの鎮痛薬の売上に貢献しただろう、と述べている。 アメリカ合衆国保健福祉省のヒト研究保護オフィス(en:Office for Human Research Protections)の前所長・グレッグ・コスキー(Greg Koski)は、査読(ピア・レビュー)で、ルーベンの論文の不正がチェックされず、結果として、ルーベンが13年間も論文不正を続けていたのは異常だと述べている 。
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