三項関係を用いた公理系
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/10 06:09 UTC 版)
「射影幾何学」の記事における「三項関係を用いた公理系」の解説
射影幾何の公理化として、ある種の三項関係を仮定するものがある。三項関係 [ABC] は、(必ずしも異なるとは限らない)三点 A, B, C が共線である(同一直線上にある)ことを意味するものとなるように、次のような公理化を考えることができる。 C0: 任意の A, B に対して [ABA] が成り立つ。 C1: 二点 A, B が [ABC] および [ABD] を満たすならば [BDC] が成り立つ。 C2: 任意の二点 A, B に対して第三点 C で [ABC] を満たすものが存在する。 C3: 任意の二点 A, C と別の二点 B, D で [BCE] および [ADE] は満たすが [ABE] は満たさないとき、さらに別の点 F で [ACF] および [BDF] を満たすものが存在する。 相異なる二点 A, B が与えられれば、[ABC] を満たす点 C の全体として、直線 AB が定義される。公理 C0 および C1 からホワイトヘッドの公理 G2 が得られ、同様に公理 C2 から公理 G1 が、公理 C3 から公理 G3 が導ける。 このような仕方で捉えた直線の概念は平面やより高次元の部分空間の概念に一般化することができる。つまり部分空間 AB…XY は、点 Z が部分空間 AB…X を動くときの任意の直線 YZ 上にある点全体の成す部分空間として、帰納的に定義することができる。このとき、共線性の概念は「独立性」の概念に一般化される。すなわち、点の集合 {A, B, …, Z} が独立であるとは、{A, B, …, Z} が部分空間 AB…Z の最小の生成系となっていることを言い、[AB…Z] で表す。 射影幾何の公理系は、空間の次元における極限を仮定する公理を用いても与えられる。最小次元は、要求された数の元からなる独立系が存在するかどうかを見ることによって決定することができる。最小次元の判定条件は以下のような形に述べることができる。 L1: 射影空間が少なくとも一点を持つならば、その空間の次元は 0 以上である。 L2: 射影空間が少なくとも相異なる二点(従って少なくとも一つの直線)を持つならば、その空間の次元は 1 以上である。 L3: 射影空間が少なくとも三つの共線でない点(あるいは二直線、もしくは一つの直線とその直線上に無い一点)を持つならば、その空間の次元は 2 以上である。 L4: 射影空間が少なくとも四つの共面でない点(同一平面上に無い点)を持つならば、その空間の次元は 3 以上である。 他の次元についても同様である。また、最大次元も同様の方法で決定できる。最大次元に関して以下のような判定条件を考えることができる。 M1: 射影空間が一つより多くの点を持たないならば、その空間の次元は 0 以下である。 M2: 射影空間が一つより多くの直線を持たないならば、その空間の次元は 1 以下である。 M3: 射影空間が一つより多くの平面を持たないならば、その空間の次元は 2 以下である。 以下同様。さて、一般に(公理 C3 の帰結として)「同一平面上にある任意の直線は必ず交わる」という定理が成り立つが、これはそもそも射影幾何学が構築される指導原理となったまさにその命題そのものである。従って、性質 M3 は「任意の二直線が必ず交わるならば」と書き換えてもよい。 射影空間の次元を 2 以上と仮定することは一般的であり、時に射影平面についてのみを問題とするときは、先ほどの性質 M3 やその類いの条件を仮定することができる。例えば (Eves 1997, p. 111) の公理系は C1, C2, L3, M3 を仮定する(公理 C3 は M3 の下では常に真であり、従ってこの文脈では明示的に仮定することを要しない)。
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