ローズウッド(クスノキ科)とは? わかりやすく解説

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ローズウッド (クスノキ科)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/02/22 14:07 UTC 版)

ローズウッド
1. 幼木
保全状況評価[1]
ENDANGERED
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : モクレン類 magnoliids
: クスノキ目 Laurales
: クスノキ科 Lauraceae
: アニバ属 Aniba
: ローズウッド A. rosodora
学名
Aniba rosodora Ducke (1930)[2]
シノニム
  • Aniba rosodora f. typica Porto, 1936, not validly publ.
  • Aniba duckei Kosterm.1938
  • Aniba rosodora var. amazonica Ducke1930
英名
rosewood

ローズウッド[3](rosewood、学名: Aniba rosodora)は、南米北部に自生するクスノキ科の樹木の1種であり、から抽出される精油が香料などに利用される。パウローサパウロサボアドローズともよばれる。また、家具材などとして利用されるシタンマメ科)なども、ローズウッドとよばれるが[4]、全く遠縁の植物である。学名の種小名rosaeodora と表記されることがあるが、正式には rosodora である[5]

などを水蒸気蒸留することによって得られる精油はローズウッド油とよばれ、リナロールを主成分とし、香料アロマテラピーに利用される[6]。香料としての需要のため大規模に伐採され[7]、2024年現在では国際自然保護連合レッドリストカテゴリーで絶滅危惧種に指定され、またワシントン条約の規制対象となっている。

名称

現地語であるポルトガル語の pau rosa[8] をもとに、パウローサ[9]あるいはパウロサ[要出典]ともよばれるが、この呼称はマメ科で木材として利用される Bobgunnia fistuloidesシノニム: Swartzia fistuloides)や B. madagascariensis(シノニム: S. madagascariensis)にも用いられる[10]。同じく現地語であるフランス語名の bois de rose[8] をもとに、ボアドローズともよばれる[3]

特徴

大きなものは高さ30メートル (m)、幹の直径 2 m に達する常緑高木[11]。幹はまっすぐ、樹皮は黄褐色[11][12]。材は比重0.8–0.9、心材は黄褐色、辺材は黄色[12]は半革質、幅4–5センチメートル、基部は狭いくさび形、先端は尖る[12]。花期は10–5月、円錐花序を形成する[11][12]

には1.8–3.4%、には1.6–3.1%の精油が含まれている[11]。いずれも主成分はリナロールであり、材で精油中の75–85%、葉で80–86%に達する[11]。そのほかに、材はα-テルピネオール、リナロールオキシド、ゲラニオールなどを、葉はカリオフィレンオキシド、リナロールオキシド、セリネン、スパツレノールなどを含む[11]

分布

南米北部(コロンビアベネズエラガイアナスリナムフランス領ギアナブラジル北部、ペルー)に分布する[2]。おもに高地の多雨林に生育する[12]

保全状況評価

国際自然保護連合レッドリストカテゴリーでは、絶滅危惧種に指定されている[1]。また、絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(CITES)、通称ワシントン条約の規制の対象となる植物(附属書Ⅱ)のリストに記載されており[13]、輸出入には、輸出国の政府が発行する許可書が必要となる[14]

分類

本種は仏領ギアナ産の標本をもとに1930年に記載された[11]。また、アマゾン川流域に分布するものは葉が小さいことで区別され、当初は変種Aniba rosodora var. amazonica)として区別され、その後、別種(Aniba duckei)として扱うことが提唱された[11]。しかし、さまざまな標本の比較からは、両者は区別できないとされ、2024年時点ではふつう同種として扱われている[2][11]

類似種である Aniba parviflora(= Aniba fragrans; 現地名 macacaporanga)からも精油が得られるが、精油中のリナロール含量が32–40%と低い(ローズウッドでは78–93%)[11]

人間との関わり

利用

2a. 材
2b. ローズウッド油

ローズウッドの木材などを水蒸気蒸留することで、精油が抽出される[6][15](図2)。この精油は、ローズウッド油(rosewood oil)やボアドローズ油(bois de rose oil)とよばれる[16]。主な精油成分はリナロールであり、ほかにα-テルピネオール、リナロールオキシド、ゲラニオールなどを含む[6][15](上記参照)。フローラルで甘い香りと、スパイシーさを併せもち、専ら香水用に生産されてきた[6][17]。精油は香料として利用され、医療には用いられなかったため、伝統医学における用法はない[17]。近年ではアロマテラピーでさかんに利用され、強壮、抗うつ、催淫、鎮静、殺虫、抗菌、鎮痛、免疫系の強化、防臭などの作用があるとされる[6][15]。皮膚感作性があるため、皮膚に問題のある人には有害となる可能性がある[17]

古くは、先住民がカヌーの材料などに利用していた[12]

歴史

ローズウッドの中で、最初に利用されたのはギアナに生育していたものである[18]。ギアナからの輸出はカイエンヌから行なわれたため、ローズウッドの精油はカイエンヌ油ともよばれていた[16]。ギアナ産ローズウッドの精油の主成分は l-リナロールとされ、9割近くを占めている[18]。l-リナロールの慣用名であるリカレオール (licareol)[19] は、ローズウッドをギアナで Licari Kanali とよんでいたことに由来するとされる[要出典]。ただし Licari Kanali はローズウッドとは別の植物 Licaria cannella としている分類もあり、誤解による命名である可能性もある。

20世紀になるとギアナ産ローズウッドが乱獲によって減少したため、ブラジル産のものが利用されるようになった[18]。ブラジル産のローズウッドの精油の主成分もリナロールではあるが、ラセミ体(l体とd体がほぼ等量)である点でギアナ産のものとは異なるともされる[18]。ただし、どちらの鏡像異性体が多いかは、木によって異なっていたとの報告もある[要出典]

1960年代前半までは、ローズウッドの精油はリナロールの供給源として重要であった。最盛期には、ブラジルでの年間生産量が600トンに達していた[16]。しかし、他のリナロール含有精油や合成リナロールの増加によって、ローズウッド由来の精油生産は急激に減少した[16]

2024年現在では、ローズウッドは絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(ワシントン条約)の規制対象となる植物であるため、流通しているローズウッド精油は、おそらく違法品であるか、ではなく葉から抽出した精油、または合成品である[17]。また、代替品として、化学組成が近い安価なホーリーフ(クスノキ科)の精油が増産されている[要出典]

脚注

出典

  1. ^ a b Barstow, M. (2021年). “Aniba rosodora”. The IUCN Red List of Threatened Species 2020. IUCN. 2024年2月11日閲覧。
  2. ^ a b c Aniba rosodora”. Plants of the World Online. Kew Botanical Garden. 2025年2月11日閲覧。
  3. ^ a b 大平辰朗 (1998). “熱帯樹木の成分と利用 (6) 精油”. 熱帯林業 43: 71-77. 
  4. ^ ローズウッド」『デジタル大辞泉』https://kotobank.jp/word/%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%82%BA%E3%82%A6%E3%83%83%E3%83%89コトバンクより2025年2月11日閲覧 
  5. ^ Aniba rosodora Ducke”. Tropicos v3.4.2. Missouri Botanical Garden. 2025年2月11日閲覧。
  6. ^ a b c d e 渡邊聡子 (2010). “ローズウッド”. アロマテラピーのきほん事典. 西東社. p. 103. ISBN 9784791617012 
  7. ^ 和田文緒 (2008). “絶滅危惧種: PALO DE ROSA”. アロマテラピーの教科書. 株式会社新星出版社. p. 20. ISBN 9784791617012 
  8. ^ a b GBIF Secretariat (2023年). “Aniba rosodora Ducke”. GBIF Backbone Taxonomy. 2025年2月11日閲覧。
  9. ^ エイダン・ウォーカー 編 (2006).『世界木材図鑑』乙須敏紀 訳、産調出版。 ISBN 4-88282-470-1(原書: The Encyclopedia of Wood, Quarto, 1989 & 2005.)
  10. ^ 熱帯植物研究会 編『熱帯植物要覧』(第4版)養賢堂、1996年、77、203頁。 ISBN 4-924395-03-X 
  11. ^ a b c d e f g h i j Maia, J. G. S., Andrade, E. H. A., Couto, H. A. R., Silva, A. C. M. D., Marx, F., & Henke, C. (2007). “Plant sources of Amazon rosewood oil”. Química Nova 30: 1906-1910. doi:10.1590/S0100-40422007000800021. 
  12. ^ a b c d e f Forest Resources Division, Agriculture Organization of the United Nations (1986). “Aniba duckei Kostermans”. Databook on endangered tree and shrub species and provenances (Vol. 77). Food & Agriculture Organization. pp. 60–68. ISBN 92-5-102522- 3 
  13. ^ Appendices (CITES). 2019年4月9日閲覧。
  14. ^ The CITES Appendices (CITES). 2019年4月9日閲覧。
  15. ^ a b c 橋口玲子 (2018). “ローズウッド”. 新版 医師が教えるアロマ&ハーブセラピー. Mynavi Publishing Corporation. pp. 194 
  16. ^ a b c d 諸江辰男 (1971). “熱帯産有用香料植物について”. 熱帯林業 20: 1–10. doi:10.32205/ttf.0.20_01. 
  17. ^ a b c d マリア・リス・バルチン 著 『アロマセラピーサイエンス』 田邉和子 松村康生 監訳、フレグランスジャーナル社、2011年
  18. ^ a b c d 川口健夫 (2011). “ローズウッド”. 香りで難病対策. フレグランスジャーナル社. pp. 15–17 
  19. ^ (R)-リナロオール”. J-GLOBAL. 科学技術振興機構. 2025年2月14日閲覧。

外部リンク

  • Aniba rosodora”. Plants of the World Online. Kew Botanical Garden. 2025年2月11日閲覧。(英語)

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