モデルの歴史・変遷
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/24 10:06 UTC 版)
アダム・スミスが考え出した人間のモデルは、ジェレミ・ベンサム流の功利主義の思想を経由し、さらにはウィリアム・スタンレー・ジェヴォンズらの影響をうけて、「物欲の充足を利己的に追求する人間」という考え方をうみだした。 「経済人」というモデルでは、あくまで「所与の欲望体系のもとで満足もしくは効用を最大にするよう行為する」場合を「合理的」と呼んでいる。このような「合理性」が最も簡単に発揮されるのは、効用が量的に測定されうる場合である。ベンサムにあっては、快楽・苦痛の強度、持続性および確実性などといった主観的かつ個人的基準と、年齢・性別・教育などといった客観的かつ社会的基準とを設けて、効用を測定しようとする努力が行われていた。しかしながら効用の量的な測定可能性は、物欲からの効用を含め、当時の心理学の視点から大きな疑義にさらされた。そこで経済学者の多くは、効用の実体的内容について吟味・検討するのを避けるようになり、選択の形式的秩序についてのみ考察するという方向にむかった。つまり、基数的可測性の前提の上に成立するものとして効用を定義しなくなり、序数的可測性のみを前提したうえでなりたつ効用関数の概念にもとづいて、「効用関数を最大にするよう行為することが合理的だ」とみなした(限界効用理論の項目も参照)。また、実際には快楽・苦痛は様々なものがあるのだが、その中からあえて個人主義的なもののみを選択・重視し(利己的)、利他性を考慮しなかった。この二つの「合理性」と「利己的な効用関数」を持つ、とした(と想定した)のが「経済人」というモデルの内容・定義である。
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