メリット制
メリット制
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/07 10:21 UTC 版)
労災保険率は、業種によって災害のリスクが異なることから、事業の種類ごとに定められているが、事業の種類が同じでも、作業工程、機械設備、作業環境、事業主の災害防止努力の違いにより、個々の事業場の災害率には差が生じる。そこで、事業主の保険料負担の公平性の確保と、労働災害防止努力の一層の促進を目的として、その事業場の労働災害の多寡に応じて、一定の範囲内で労災保険率(継続事業(一括有期事業を含む。以下同じ)の場合)または労災保険料額(有期事業の場合)を増減させる制度(メリット制)を設けている。 継続事業のメリット制 継続事業では、その業種に適用される労災保険率から、非業務災害率(全業種一律0.6/1000)を引いた率を40%の範囲で増減させて、労災保険率(「メリット料率」)を決定する。 対象となる事業は、 メリット制が適用される保険年度の前々保険年度に属する3月31日(「基準日」)において、労災保険の保険関係が成立してから3年以上経過していること 基準日の属する保険年度の前々保険年度から遡って連続する3保険年度中(「収支率算定期間」)の各年度において、使用した労働者数に関して、次のいずれかを満たしていること100人以上の労働者を使用した事業であること。 20人以上100人未満の労働者を使用した事業であって、災害度係数が0.4以上であること(災害度係数=労働者数×(業種ごとの労災保険率-非業務災害率)) 一括有期事業においては、連続する3保険年度中の各保険年度において確定保険料の額が40万円以上であること 労災保険料率を上げ下げする基準は、基準日における保険料に対する保険給付の割合(「メリット収支率」)により、メリット収支率が85%を超え(保険給付が多い≒労災が多い)または75%以下となる(保険給付が少ない≒労災が少ない)場合は、事業の種類に応じて定められている労災保険率から非業務災害率を減じた率を40%(確定保険料が100万円未満の一括有期事業は30%)の範囲内で上げ下げし、これに非業務災害率を加えた率を、基準日の属する保険年度の翌々保険年度において当該事業に適用する労災保険率とする。 例えば平成25年4月1日(平成25年度)に保険関係が成立した事業において、平成28年3月31日(平成27年度、保険関係成立から3年経過)までの3年間にメリット収支率が所定の値に達した場合、翌々保険年度たる平成29年4月1日(平成29年度)からメリット制が適用される。 有期事業のメリット制 有期事業(一括有期事業を除く。以下同じ)では、事業終了後、いったん確定精算した労災保険料の額を、メリット制により増減する。 対象となる事業は、 確定保険料の額が40万円以上であること 建設の事業は請負金額(消費税相当額を除く)が1億1千万円以上、また、立木の伐採の事業は素材の生産量が1000立方メートル以上であること。 改定確定保険料は、算定したメリット収支率によって継続事業と同様にメリット増減率を判定し、その増減率に基づき40%(立木の伐採の事業は35%)の範囲内で上げ下げし算定する。有期事業のメリット制によって確定保険料が引き上げられた場合、所轄都道府県労働局歳入徴収官は通知を発する日から起算して30日経過後を納期限として事業主に納入告知書で通知しなければならない。逆に引き下げられた場合、事業主は10日以内に差額還付請求が行えるが、未納の労働保険料その他の徴収金がある場合は優先的にそちらに充当される。 特例メリット制 中小企業における労働災害防止活動を一層促進する目的で、所定の安全衛生措置を講じた中小企業事業主を対象に「特例メリット制」が設けられている。 対象となる事業は、 メリット制が適用される継続事業であること(建設の事業及び立木の伐採の事業を除く) 厚生労働省令で定める労働者の安全または衛生を確保するための措置(安全衛生措置)を講じたこと具体的には、機械設置等の計画届の免除の認定を受けた事業主が講ずる措置(労働安全衛生マネジメントシステムの実施)を講じて、都道府県労働局長の確認を受けることが必要 中小事業主であること常時使用する労働者数が、金融業、保険業、不動産業、小売業、飲食店については50人以下、卸売業、サービス業については100人以下、その他の事業については300人以下。 安全衛生措置を講じた保険年度の次の保険年度の初日から6か月以内に、特例メリット制の適用を申告していること 特例メリット制による労災保険率の増減は、継続事業のメリット制と同じ方法で算定するメリット収支率を基準として行う(通常は最大40%のメリット増減率を最大45%とする)。安全衛生措置を講じた保険年度の翌々保険年度から3年間、特例メリット制による労災保険率の増減が適用される。
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