ミラー着艦支援装置
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/09/09 15:23 UTC 版)
日本やフランスは第二次世界大戦前から光学着艦装置の原型ともいえる着艦指導灯を使用していた。現在に続く光学着艦装置として最初に実用化された装置が、ミラー着艦支援装置(英語: mirror landing aid)であった。これは第二次世界大戦後にイギリスで行われた。ミラー着艦支援装置はNicholas Goodhartによって発明された。まず「イラストリアス」と「インドミタブル」においてテストされ、1954年にイギリス海軍に、1955年にアメリカ海軍に導入された。 ミラー着艦支援装置は、飛行甲板の左舷側にジャイロスコープで安定化された凹面鏡を設置したものであった。鏡の左右両側には、直線に緑色の基準ライト(datum lights)が並べられた。明るいオレンジ色の「ソース」(source)ライトが鏡に照射され、着艦しようとする機体のパイロットからはそれが鏡の中に「ボール」(あるいは後年アメリカ海軍では「ミートボール」(meatball)と呼ばれた。)のように見えた。基準ライトと比較したボールの位置が、あるべき降下経路(グライドパス)に対し現在機体がどうあるのかを示した。すなわち、ボールが基準より上にある時は機体はグライドパスの上方にあり、ボールが基準より下に見える時は機体はグライドパスの下方にある。基準ライトの間にボールが来ている時、機体はグライドパスにちょうど乗っていることになる。安定したグライドパス表示を行うため、ジャイロによる安定化が波による飛行甲板の動揺の影響を軽減する働きをした。 当初は、この装置によりパイロットはLSOの指示が無くても着艦が可能になると考えられた。しかし実際には、システムの初期導入時に事故率が増加した。そこでシステムの中にLSOを組み込むように、現行のシステムが開発された。この改良によって、アメリカ海軍空母の着艦時事故率は、1954年の着艦1万回あたり35件から、1957年の1万回あたり7件へと大幅に減少した。 LSO(着艦信号士官)は、海軍パイロットの中でも特に経験豊富かつ資格を持った者で、着艦中のパイロットに対し無線で、エンジン出力の増減や相対的な降下経路・進路維持などについて助言できる。同時にLSOは光学着艦装置に装備されたライトも併せて使用し、明るく赤く点滅する着艦復行ライト(Wave-off lights)を使用してパイロットに着艦復行の指示を送る。また、緑のライトが並んだカットライト(Cut lights)などとのコンビネーションで、「着艦帯がクリアである」「エンジン出力を増せ」「着艦中止」などの追加情報を見せることも可能である。
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