マフィアの誕生
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/21 08:26 UTC 版)
マフィア発祥の地であるシチリア島は、地中海のほぼ中央に位置している。イタリアとチュニジアを結ぶ中間点にあることから、古代から近世にかけて様々な民族による侵略を受け、長年にわたり諸外国の勢力下に置かれていた。シチリアには近年まで自治行政府は存在せず、数世紀にわたり大土地所有制度の下、貴族などの権力者によって住人たちは抑圧されてきた。シチリアに主権が与えられたのは第二次世界大戦後の1947年である。 長期間続いた外国による支配と彼らの失政、その腐敗構造により、かつて農業の盛んだったシチリアの国土は荒れ果て、山賊等の無法者が蔓延る島となった。このため島の住人たちは公権力に対して強い不信感を持つようになった。シチリア人にとって、「公権力に頼ること」や「公権力に協力すること」は非常に不名誉なことであるとされるようになり、「公権力に頼らず、自分の力で問題を解決していくこと」が名誉ある生き方と考えられるようになっていった。 18世紀、シチリアに領地を持っていた貴族や地主らは、ナポリやパレルモ等の都市部に居住しており、領地の経営やそこに住む小作農民への関心は薄かった。彼らから広大な農地を貸与された農地管理人(ガベッロット)たちは、地主たちの無関心を利用して、そこでの収益を地主に不正申告し、余った金を小作農民たちに法外な利子をつけて貸しつけたり、また当時は非常に儲けの大きかった家畜泥棒等をして私腹を肥やしていった。そして彼らは農地監視人(カンピエーレ)という農地を山賊や盗賊から守るための人間を雇い、徐々に地主たちからその権利を奪い取り、さらに、貴族、政治家、警察、教会などの上流階級や小作農民や山賊らをも取り込んでいき、勢力を拡大していった。彼ら農地管理人と農地監視人がのちにマフィアと呼ばれる組織の母体となったと言われている。 こうして誕生したマフィアは、シチリアの住人に対して「無能で高圧的な公権力に対し、誇り高く名誉ある男として振る舞う男たち」というイメージを刷り込んでいった。シチリアの大衆もそんな彼らに幻想を抱き、救いの手を求めるようになっていった。
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