ペット‐ロスとは? わかりやすく解説

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ペットロス

別名:アニマルロス
英語:pet loss

飼っていたペットが死ぬこと。また、ペット死によって深い喪失感とらわれること。

一般的にペット強く愛情注いでいた飼い主ほど、ペットロスにより深刻な影響を受けるとされる。そのショックから心身変調をきたす場合もある。ペットロスにより生じる諸症状ペットロス症候群呼ばれている。

ペット‐ロス【pet loss】

読み方:ぺっとろす

長年かわいがってきたペットの死が原因ショック症状陥ること。食欲不振や鬱(うつ)状態になったり、自殺考える例もあるとされる


ペットロス症候群

(ペット‐ロス から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/08 15:10 UTC 版)

ペットロス症候群(ペットロスしょうこうぐん)とは、ペットと死別したり、ペットが行方不明になったり、盗難に遭ったりしたこと[1]などを契機に発生する、疾患ないし心身の症状のこと。治療法や支援法については、「ペットロス症候群#治療」を参照。

概要

ペットロスは、文字通り「ペットを失う事」である。これは、ペットと共に過ごす事によって培われた深い愛着・愛情が、突然に訪れるペットの「」や行方不明などによって行き場をなくしてしまうことによって強い悲嘆に陥る[2]。このような愛情の対象を喪失することで起きる悲嘆によって抑うつ分離症状といった心身(精神的・身体的)の症状が起きることを病理的悲嘆(pathologic grief)といい、慢性的で強い症状を経験するとペットロス症候群と呼ばれる[2]

ペットロス症候群とは、ペットとの別れなどというストレスが契機となって発症した精神疾患症候群≒病気≒疾患)を言い、診断において一致している見解として、

  • 6か月以上の期間を経ても強度の症状が継続する(期間)
  • 自己が認識する悲しみの感情を、発症した症状による身体的苦痛が圧倒するほど激しい(症状)
  • 日常生活に支障をきたしている(生活への支障)

という点が重視される[2]

ペットロス症候群に至る要因には様々な事情があり、ペットを安楽死させたことについて自分の決断を長く悔やむ人もいる[2]。ペットを代替可能な愛玩物と考える人もいることから、ペットの死で悩んでいることが周囲の人に理解されないという問題もある[2]。「また飼えばいいじゃない」という心無い言葉に傷ついたり、ペットの死にいつまでも悩んでいる自分は異常なのではないかと思い詰める人も多い[2]。また、愛していたペットを失うというよりも、生活環境の変化などから次のペットを飼えなくなったことによって発症する依存症的なケースもある[2]

最近、このような精神的・身体的障害が起こる原因として、飼い主のペットを伴侶動物(コンパニオンアニマル)としての位置づけが挙げられている[2]。日本では2000年代頃から注目を集めるようになったが、ペット産業の盛んな米国では1990年代頃より精神疾患の契機として重要視されるようになった。日本では、内田百閒の『ノラや』(1957年)が、ペットロス症候群という言葉さえなかった頃の、同症候群に関する記述として注目される。

代表的な精神疾患・症状

以下に、代表的な精神疾患、精神症状・身体症状の例を示す。

このような、精神疾患や症状を精神分析的に説明すると、ペットとの別れという現象を受け入れられない場合の防衛機制の一種である逃避であるとも解釈されよう。他方、行動療法(行動医学)の基礎理論である刺激反応モデルによって説明すると、ペットの別れという「刺激」に対する生体の「反応」ということになろう。

なお、ペットとの死別に関しては、社会学的には次のように説明される。近時の少子高齢化を背景に、ペットを生活上の伴侶として扱う(コンパニオンアニマル)人が増加している。ところが、ペットの寿命は10年程度であり、どうしてもヒトより短命である。このような人とのより深いかかわりを持つ動物の増加で、ペットとの死別という避けがたい出来事が、飼い主に深刻な影響を与えるケースが増加してきた。

軽度ないし遷延しない症状については、健全な精神性の発露とみなすことが可能ではあるが、健康を害するほどに悲嘆に暮れる状態は健全とは言えず、投薬を中心にして、必要に応じてカウンセリング等を併用する治療を必要とする場合もある。日本医師会では1ヶ月以上、悲しみが癒えずに不調が続いている場合に、受診を勧めている(外部リンク参照)。心療内科精神科など専門医の受診も勧められる。

臨床心理士などによる心理療法の分野では、喪失体験からの回復過程を援助するためのプログラム(グリーフセラピー)を行う心理療法家が存在する。

治療

上述のグリーフセラピーを行う。加えて、グリーフケアを通して本人をサポートする[5]

ペットロスの飼い主が実際に会って互いに悲しみや苦しみを吐き出して共有する、セルフヘルプミーティングが実施される場合もある[6]。そこでは、ペットロスの体験を共有しながら話をすることで、共感し、自分一人ではないことに気づく[6]。すると心がほぐれ、自分の体験を語ることができるようになる[6]。このような流れで、苦しみを吐き出すことができるようになり、心の負担が軽減される[6]

なお、先述のようにうつ病や不眠、摂食障害などがみられる場合の治療については、「うつ病#治療」・「不眠症#治療」・「摂食障害#治療」なども参照。

ペットロスちゃんねる[7]がペットロスを解消した人151人を対象に行ったアンケート[8]の集計結果によると、ペットロスを解消のきっかけになった出来事で多かった順に、「新しい仔を飼った」が23%、「時間が回復させてくれた」が9%、「お葬式や埋葬・供養などをした」が7%、「動画や写真を見た」が4%、「家族や友人と話した」が3%などとなっている。

関連事象

この問題では、飼い主がもともと有していた依存的な性格傾向等を背景として、ストレスからの逃避として、アルコール依存症などの問題を引き起こすケースも見られ、米国では加えて薬物依存症に発展する問題も指摘されている。

これらはペットの死に対して、事故死による「あの時、外に出るのを防いでいれば」や、病死における「獣医に見せていれば」というケースにて、自分に責任があると感じて、後悔や自責の念から精神的に参ってしまう場合や、あるいは治療を担当した獣医師の診療ミスを疑って、他を攻撃する事で心痛を紛らわしたりというケースも見られ、特に民事訴訟が盛んな米国では、このような「医療ミス」として訴訟に至る事例も少なく無い。

その一方で、「死」という現象を受け入れるための儀式として葬儀があるが、日本でも次第にペット供養などのサービスも増加しており、これらの需要が少なくないことがうかがわれる。ペットロス症候群では、死別を不可避と考え、自分の中の気持ちを切り替えていくことも治療の一環と考えられるため、何らかの形で失ったペットとの絆に一つの区切りを設けるのも必要なのだろう。

関連項目

  • 虹の橋 (詩) - ペットを亡くした人たちの間で伝わる作者不明の詩。亡くなったペットは天国の手前の「虹の橋」で仲間達と遊んでいるが、死んだ飼い主と再会すると一緒に虹の橋を渡って天国へ入るという内容である。
  • お迎え現象 - 終末期の人物などが、通常では不可視の事物を感知する現象。故人や亡くなったペットを目撃するとされる事例が多く、グリーフケアへの有効性が提言される場合もある。
  • Kagrra, - 2006年に発表したシングル「うたかた」の歌詞は、ヴォーカルの一志が愛犬を亡くし、周囲の励ましでペットロスを乗り越え書かれたもの[9]
  • 穴澤賢 - 著書「またね、富士丸。」(世界文化社刊)にて、飼い犬を突然亡くした直後、ペットロスに陥った経験を綴っている。
  • ネコの毛並み - 「亡くなった飼いネコのクローンを作ります」とした米ベンチャー企業があったが、生まれたネコが毛並みが違ったため客からのクレームも付いて商業的に失敗、2006年に同事業から撤退した。なおクローンには記憶は継承されないため、遺伝的や外見的に同じだったとしても、別の個体(→WIRED.jp「クローン猫は外見も性格も別の猫」)である。
  • 孤独
  • 殺処分

脚注

  1. ^ [ペットロス]仲間と悲しみ共有 読売新聞 (2011-8-18)
  2. ^ a b c d e f g h 石田戢・濱野佐代子・花園誠・瀬戸口明久(編)『日本の動物観:人と動物の関係史』 東京大学出版会 2013年 ISBN 978-4-13-060222-8 pp.63-65.
  3. ^ 「こころの風邪」ともいわれるうつ病は、重要な関係を持つ人(例えば配偶者など)との別れといった「喪失体験」が契機となって発症する場合が目立つことが、従来から指摘されてきた。ペットを生活上の伴侶(コンパニオンアニマル)として扱う人の増加によって、ペットの死がうつ病発症の契機となる「喪失体験」になる場合があることを、ペットロス症候群は示している。
  4. ^ 精神病様症状とは、精神病に似た症状をいう。軽度の場合、ペットの声が一瞬、空耳で聞こえたり、ペットの姿が一瞬見えたりする(錯覚)ことがある。これは、特にペットが死亡して間がないうちには、健常な反応としてもみられることがある。しかし、健常な反応の場合は、一般には短期間で終息する。また、そのような声や姿が現れることが、実際にはありえないことを自覚できている。他方、長期間遷延したり、実際にはあり得ないという自覚を欠く幻覚・妄想に至ってきた場合には、一般には重症化の徴候である。
  5. ^ 木村祐哉 (2009). ペットロスに伴う悲嘆反応とその支援のあり方. 心身医学, 49, 357-362, doi:10.15064/jjpm.49.5_357
  6. ^ a b c d 北本亜由美、山内正人、砂原秀樹 (2014). ペットロスのためのオンラインセルフヘルプミーティングの提案と評価.インターネットと運用技術シンポジウム 2014論文集, 43-50.
  7. ^ ペットロスちゃんねる”. ペットロスちゃんねる. 2020年2月1日閲覧。
  8. ^ ペットロスを克服した151人の体験談”. 2020年2月1日閲覧。
  9. ^ 一年、、、。|【PSC】Kagrra, 一志の独言(2007.06.16)

外部リンク


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