ベルリンへ戻り、帰宅
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「モーツァルトのベルリン旅行」の記事における「ベルリンへ戻り、帰宅」の解説
その後モーツァルトはベルリンへ引き返し、5月19日に到着した。コンスタンツェへの書簡によると、彼はこの2回目のベルリン滞在中に王宮にて王と王妃に演奏を披露し(5月26日)、100フリードリヒ金貨(約800フローリン)の褒賞、王のための6つの弦楽四重奏曲と王女フリーデリケのための6つの易しいピアノソナタの委嘱を受けたという。 ベルリンに到着した夜、モーツァルトは彼のオペラ『後宮からの誘拐』の上演を観に来ていたらしいと思われる。地元の新聞は彼の観劇に触れていないようであるが、ずっと後の1856年に遺作として出版された、ドイツの著名な詩人ルートヴィヒ・ティークの回顧録に記録されていた。当時まだ16歳にもなっていなかったティークは、第三者の視点から自身を描写する形で次のように書いている。 ルートヴィヒのモーツァルトに対する敬意は驚くべき形で報われた。1789年のある夜、いつものように開演のずっと前に薄暗くまだ人のいない劇場に入った彼は、オーケストラピットにひとりの知らない男がいるのに気が付いた。彼は小柄で、動きは素早く落ち着かず、顔には馬鹿みたいな表情を浮かべていた。灰色の外套に身を包んだ人好きのしない姿である。彼は奏者の譜面台を1つ1つを見て回り、彼らの譜面を注意深く修正しているようであった。ルートヴィヒはこの男に声をかけ、このオーケストラ、この劇場、このオペラ、そして聴衆の趣味について話をした。彼は自らの見解を率直に表明したが、モーツァルトのオペラについてはこれ以上ない賛辞を口にした。「つまり君はモーツァルトのオペラをよく聴いていて、好んでいるということだね?」その見知らぬ男性は尋ねた。「それはとてもいいことだ、若者よ。」彼らの会話がしばらく続き、ゆっくりと観客席が埋まってくると、その見知らぬ男性はとうとう舞台上の誰かに呼ばれて行ってしまった。その男の言葉は奇妙にルートヴィヒの心を動かし、彼は問い合わせを行った。彼と話をして、彼への評価を述べたのはモーツァルトその人、かの偉大な巨匠だったのである。 モーツァルトは5月28日にベルリンを出発、ドレスデンを経由してプラハには5月31日から6月2日まで滞在、最終的には6月4日にウィーンへと帰り着いた。
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