フッ化物応用
う蝕(むし歯)の予防法は、1)宿主・歯質対策(フッ化物応用、シーラント)、2)食事性基質対策(甘味摂取量・頻度のコントロール)、3)微生物対策(歯口清掃)に分類される。このなかで、歯口清掃単独でのう蝕予防効果は低い。それに対して、フッ化物応用は、科学的根拠に基づく口腔保健対策として世界的に普及している方法であり、WHO Global Oral Health Programme(2003)でも最も優先順位の高い施策目標に位置づけられている。先進国を中心に、フッ化物の全身的応用と局所的応用が普及した結果,小児う蝕の激減をもたらしている。その効果は、小児う蝕に限らず、成人の歯根面う蝕にも予防効果が認められている。
歴史的には、エナメル質の形成不全のひとつである「歯のフッ素症(dental fluorosis)」の原因を追究するために行われた1940年代までの米国での広範な疫学調査の結果から、飲料水中のフッ化物によるう蝕抑制効果が確認された。その後、1945年には米国ミシガン州グランドラピッズ市で、水道水フッ化物添加事業(water fluoridation)が開始されて以来、現在では約60カ国3億6千万人以上の人々を対象に実施されている。調整されるフッ化物濃度は、その地域の気候を背景にした飲料水摂取量によって異なるが、概ね1ppmに調整される。これ以外の全身的応用法には、食塩への添加(salt fluoridation)と錠剤の処方がある。一方、局所応用法には、フッ化物歯面塗布法(fluoride topical application、年2〜4回)、 フッ化物洗口法(fluoride mouth rinses、週1回法または毎日法)、フッ化物配合歯磨剤(fluoride tooth pastes)という方法があり、これらのう蝕予防効果は20〜50%である。このうちフッ化物配合歯磨剤は、その利用の簡便性から世界的に最も普及した方法である。一方、フッ化物洗口法は、費用対効果の点で優れた方法であり、学校保健プログラムの一環として行うことでその継続性も確保されるので、局所応用法のなかでは、最も高いう蝕予防効果が報告されている。(深井穫博)
参考URL:
World Health Organization:World Oral Health Report 2003, Continuous improvement of oral health in the 21st century - the approach of the WHO Global Oral Health Programme
http://www.who.int/oral_health/media/en/orh_report...
フッ化物応用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/01 06:40 UTC 版)
フッ化物応用(フッかぶつおうよう、Fluoride application)とは、フッ化物の応用、日本では特に虫歯予防のためのフッ化物の応用を指す[1]。
- ^ a b 滋賀県フッ化物洗口実施マニュアル(第2版)
- ^ フッ素配合歯みがき剤のシェア(市場占有率)と12歳児のむし歯経験歯数(DMFT)の推移(ライオン歯科衛生研究所)
- ^ ひとめでわかるフッ化物応用(国立保健医療科学院)
- ^ a b c d e フッ化物応用に対するわが国の見解(日本歯科医師会)
- ^ フッ化物に対する基本的見解(日本歯科医師会)
- ^ 今後のわが国における望ましいフッ化物応用への学術的支援(日本口腔保健学会)
- ^ う蝕予防プログラムのためのフッ化物応用に対する見解(日本口腔衛生学会)
- ^ 衆議院議員松沢俊昭君提出フッ素の安全性に関する質問に対する答弁書 昭和六十年三月一日受領 答弁第一一号 内閣総理大臣 中曽根康弘(衆議院)
- ^ 幼児期における歯科保健指導の手引き(厚生省) ISBN 978-4896050684
- ^ 厚生省健康政策局歯科保健課と生活衛生局水道環境部との合意文書
- ^ 6歯の健康 目標値のまとめ(健康日本21)
- ^ フッ化物洗口ガイドライン(厚生労働省)
- ^ a b c フッ化物の口腔衛生領域への応用(日本歯磨工業会)
- ^ フッ素配合歯みがき剤のシェアと12歳児のDMFT(ライオン歯科衛生研究所)
- ^ 滋賀県フッ化物洗口実施マニュアル p.8
- ^ Fluoride mouthrinses for preventing dental caries in children and adolescents(コクラン共同計画)PMID 27472005
- ^ Fluoridation facts2018(アメリカ歯科医師会)P1
- ^ フロリデーションファクツ2018(日本口腔衛生学会)Piii ISBN 9784896053685
- ^ Information Paper – Water fluoridation: dental and other human health outcomes(オーストラリア政府)P1
- ^ フッ化物応用と公衆衛生 P38
- ^ a b 地域歯科医師会が報じた水道水フロリデーションの実施状況─京都府歯科医師会報から─口腔衛生会誌 J Dent Hlth 69: 223–231, 2019
- ^ 最良のむし歯予防方法水道水フロリデーションの国会答弁
- ^ 2019年6月6日 熊野せいし 参議院 厚生労働委員会 質疑(YouTube)
- ^ 新潟県令和4年6月定例会本会議07月19日-一般質問-04号 https://ssp.kaigiroku.net/tenant/prefniigata/MinuteView.html?council_id=1023&schedule_id=5&is_search=false&view_years=2022
- ^ Fluoridation facts2018(アメリカ歯科医師会)P25
- ^ 小児のう蝕予防のためのフッ化物配合サプリメント(錠剤、ドロップ、トローチまたはチューインガム)(コクラン共同計画) PMID 22161414
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