パルド提案
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1960年代になると海底には地上に埋蔵するよりもはるかに大量のマンガン団塊が埋蔵していることが明らかになり、世界的な注目を浴びた。1967年8月17日、マルタ政府国連代表のパルド(英語版)は国連総会第1委員会において、深海底を平和利用のため、および人類全体の利益のために開発される「人類の共同遺産(英語版)」とし、そこに新しい国際制度を設定することを提案した。各国が権利拡大を試みる大陸棚の範囲を限定し、大陸棚以遠の海底を深海底として国際管理下に置こうとしたのである。これは国連の場で初めて深海底の問題を取り上げたものとされ、「パルド提案」といわれる。この「パルド提案」は満場一致で採択され、国連総会は翌1968年に海底平和利用委員会を設置し、深海底に関する検討作業が開始された。同委員会の検討作業の結果、1969年に国連総会は国家であるか私人であるかを問わず深海底区域の開発を差し控えることを要請する『深海底開発モラトリアム決議』を採択し、1970年には深海底を規律する条約起草のガイドラインとして、『深海底を律する原則宣言』を採択した。同宣言において深海底とは、「人類の共同遺産」であり、いずれの国家の取得対象ともならず、資源の探査・開発活動は将来設立される国際制度にゆだねられ、すべての国による平和利用のために開放され、探査・開発活動は特に発展途上国の利益を考慮して行わなければならない、とした。この宣言は深海底の基本的地位を定めたものであり、1982年に採択される国連海洋法条約での深海底制度の基礎となったと評価される。先進国も当初は海洋の自由を主張しこれに基づく自由開発を主張したが、自由開発に伴うリスクを回避するためには国際制度を設定し海底開発事業への保障が確保されることの方が得策と判断し同調した。
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