パルサーの年齢と減速率
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/02/20 16:15 UTC 版)
「PSR B1937+21」の記事における「パルサーの年齢と減速率」の解説
1982年にバッカー達が発見した当時、PSR B 1937+21の自転周期は 6986300000000000000♠3×10−14 s/s で増加、すなわち自転は減速していた。パルサーは電波放射によって回転エネルギーを失うので時間の経過と共にその自転は減速する。パルサーの最高回転速度は遠心力と自己重力の釣り合いもをとに0.5ミリ秒周期程度だとされており、発見当時の回転周期と減速率をもとにこのパルサーの最高年齢は750年と計算された。パルサーの最高回転速度は用いる中性子星の状態方程式の違いにより0.3から 1ミリ秒ぐらいが限界だと考えられている。パルサーの最高速度はこの他にも重力波の放出などによっても制限される可能性があるという説がある。 しかし、この750年という年齢はこの領域の他の波長の観測結果とは相容れないものだった。例えば可視光では超新星残骸は見つからず、X線で観測しても明るいX線源はなかった。このパルサーが750年の若さならば、もし、動いていたとしても、それほど誕生時の位置から動いているはずもなく、何らかの超新星残骸が近傍に見つかるはずである。また、若いパルサーは熱いはずで、その熱放射はX線領域で観測されるはずである。 ヴェンカトラマン・ラーダークリシュナン(英語版)とG. シュリニヴァサンは超新星残骸がないことに注目し、このパルサーは初めはそれ程速く回転していなかったが、伴星からの物質が降着したことによって回転が加速させられたと考えた。また、理論上の減速率は毎秒 1×10−19秒だとした。バッカーたちは1982年12月には減速率の上限を毎秒1×10−15秒に修正していたが、今日までのデータでは、毎秒1.05×10−19秒で理論値に近い。従ってPSR B1937+21の年齢は2.29×108年と計算され、観測と矛盾しない値となっている。 このパルサーを加速させた伴星はもはや存在せず、伴星を持たないミリ秒パルサーの数少ない例の一つである。一般にミリ秒パルサーはそれを加速させるのに必要だった伴星を持つが、一旦高速になった後は伴星を持つ必要はないので、このミリ秒パルサーのように『独身』のミリ秒パルサーは伴星による加速説を否定するものとは考えられていない。伴星が蒸発したか、潮汐破壊された可能性があると考えられている。
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