バランスシート‐ふきょう〔‐フキヤウ〕【バランスシート不況】
バランスシート不況
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/06 10:14 UTC 版)
「リチャード・クー」の記事における「バランスシート不況」の解説
バランスシート不況とは、大多数の民間企業がバランスシート悪化の修復に動く事で、合成の誤謬によってマクロ経済に悪循環をもたらし引き起こされる、デフレによる不況(景気後退)の原因を説明した、リチャード・クーが提唱した経済理論モデルの一つである。 通常景気後退局面では、各国の中央銀行による政策金利の引き下げが行われ物価や景気刺激が誘導される。政策金利は景気が良い場合には高く設定され、景気が悪い場合には低く設定される。これによって、景気が良い場合には預貯金やローンの金利が上がり、通貨の流通が抑えられ、景気が悪い場合には金利が低くなり通貨の流通を促進させる。このように中央銀行によって流動性供給や金融緩和が行われる事で適正な物価や通貨価値の安定といった経済環境をもたらす事ができる。 しかし資産バブル崩壊による景気後退局面では不動産や株式などの担保価値を持つ資産価格の下落により、企業は深刻な貸借対照表(バランスシート)悪化の問題に直面することになる。これにより多数の民間企業が大きな負債を抱えた状態となり、この負債圧縮、借金返済のために資産の売却や設備投資の縮小が行われ、これが更なる資産価格下落や景気の悪化を呼び、企業のバランスシートを悪化させる(→合成の誤謬も参照)。そしてこのことが更なる負債圧縮、借金返済を迫り、資産価格の下落や景気悪化をもたらすという悪循環が起きるとする。また、このような場合には企業が設備投資よりも負債の圧縮を優先することから、金融緩和による景気刺激効果が弱まる。 このように大多数の民間企業がバランスシート悪化の修復に動く事で、マクロ経済に悪循環をもたらしている状態を「バランスシート不況」と呼んでいる。 また田中秀臣は、この論を1930年代にアーヴィング・フィッシャーが提唱したデット・デフレーションの理論 を、バランスシート調整の観点から焼き直したものとし、この論説を批判している。
※この「バランスシート不況」の解説は、「リチャード・クー」の解説の一部です。
「バランスシート不況」を含む「リチャード・クー」の記事については、「リチャード・クー」の概要を参照ください。
- バランス・シート不況のページへのリンク