バイオテクノロジーへの応用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/18 15:26 UTC 版)
「メタゲノミクス」の記事における「バイオテクノロジーへの応用」の解説
微生物群集は、菌叢の内部で繰り広げられる競争とコミュニケーションで使用される、生理学的に活性な化学物質を生産している。今日使用されている薬物の多くは、もともと微生物で発見されたものが多く存在する。そして、未培養系統の微生物が持つ豊富な遺伝資源の探索することで、新しい酵素や天然物及びそれらをコードする遺伝子の発見がなされている。メタゲノム解析の応用により、ファインケミカルの生産や農薬、医薬品等に応用可能な新規遺伝子の探索が進められており、また新規な酵素触媒によるキラル合成なども注目を集めている。 メタゲノム解析をバイオテクノロジーへ応用する際には、大きく分けて2種類の方針がとられる。一つは発現形質に基づく機能駆動型スクリーニングであり、もう一つはDNA配列に基づく配列駆動型スクリーニングである。機能駆動のスクリーニングでは、目的の特性や有用な活性を示すような配列をDNAクローニングと遺伝子発現実験から特定し、続いて生化学的特性評価と配列解析を行う。このアプローチでは、適切なスクリーニングの利用可能性や、求めている形質が宿主細胞で発現されるかどうか、といった要件によって制限される。さらに、一般的にこのアプローチは発見率が低く(1,000もの配列をクローニングしてスクリーニングしても、1配列も当たらないことが往々にしてある)、労力を要する作業が必要となる。対照的に配列駆動のアプローチでは、既知のDNA配列を使用してPCRプライマーを設計し、目的配列のPCR増幅を配列決定経てスクリーニングを行う。前者のクローニングベースのアプローチと比較して、後者のシーケンスのみのアプローチでは、必要な実験量が大幅に少ない。また、次世代シーケンサーの適用により、膨大な量の配列データを生み出すこともできるが、得られたデータの解析にはバイオインフォマティクス解析が必要になる。配列駆動型アプローチは、配列データベースに含まれる遺伝子機能の量と精度によって制限される。そのため現実的には、目的の機能やスクリーニングするサンプルの複雑さ、およびその他の要因に基づいて、機能駆動形と配列駆動形の両方アプローチを組み合わせて利用することが多い。メタゲノム解析から得られた有用物質の例としては、マラシジン(英語版)という抗生物質などが知られている。
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