バイオテクノロジーへの利用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/15 16:17 UTC 版)
「アグロバクテリウム」の記事における「バイオテクノロジーへの利用」の解説
T-DNAは植物遺伝子工学の特に有用なベクターであり、アグロバクテリウムのDNA転移能力は植物の核ゲノムに外来遺伝子を導入する(トランスジェニック植物の作出)手段として盛んに利用されている。 具体的には、目的の遺伝子配列と植物での選択マーカー遺伝子をT-DNA内に挿入し、それを植物細胞の核ゲノムに挿入させる。T-DNAの中で植物ゲノムへの挿入に必須なのはT-DNA両端に存在するRB(right border:右境界配列)とLB(left border:左境界配列)とよばれる25塩基対(コンセンサス配列: 5'-TGGCAGGATATATN(C/G)N(G/A)(T/G)TGTAA(A/T)(T/C)-3', NはACGTのいずれでも構わない)である。RBとLBに挟まれた内側の配列には特異性はなく、どのような配列でも構わない。また、野生型のT-DNA中に存在する腫瘍形成遺伝子群は挿入には必要ないだけでなく植物体再生に悪影響を及ぼす。そこで、腫瘍形成遺伝子群を目的の遺伝子と置き換えれば、目的の遺伝子を植物細胞に導入できるうえに増殖した形質転換細胞が腫瘍を形成することもない。 形質転換植物体を得る方法としては、まず組織または細胞にアグロバクテリウムを感染させ、これを培養して植物体に再生させる方法がある。もう1つの方法としては、花にアグロバクテリウムを感染させ、種子を形成させる方法(フローラル・ディップ(floral dip)法やフローラル・スプレー(floral spray)法)がある。 形質転換植物の作製法の詳細については、遺伝子組換え作物の作製法を参照。 一例としてホタルのルシフェラーゼを用いた「光る植物」の作出にも用いられ、この方法は植物の葉緑体機能の研究やレポーター遺伝子(遺伝子の調節領域の研究用)としての利用に有用である。アグロバクテリウムは自然には双子葉植物などにしか感染しないが、現在ではT-DNAはイネなどの単子葉植物や真菌などでの利用も可能になっている。さらにT-DNAをヒトの細胞に転移することも実験的には可能である。
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