ハードボイルドの出現
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/12 00:09 UTC 版)
1928年、ダシール・ハメットが名無しの探偵コンティネンタル・オプの最初の長編「デイン家の呪い」とそれに続き「赤い収穫」を発表。従来の推理小説とは一線を画す「酒、暴力、アクション、恋愛」といった要素の多い「ハードボイルド」と呼ばれる、主としてアメリカの大都会を舞台にした私立探偵ものの嚆矢とされる。ハメットは1930年、もう一人「マルタの鷹」で初登場するサム・スペードも創造した。オプとスペードに続く第3のキャラクター、おしどり探偵ニックとノラの活躍を描く「影なき男」も好評で、映画でシリーズ化された。 ジョン・ダン・マクドナルドの長編は、『濃紺のさよなら』から題名に色の名前がつけられ、シリーズ・キャラクターのトラヴィス・マッギーは、さまざまな作家に影響を与えた。ノンシリーズ作品『恐怖の岬』はグレゴリー・ペックとロバート・ミッチャム、マーティン・バルサムの共演で映画化された。 ハードボイルドものの都会的なセンスおよびスリリングな展開と、本格ものの論理的な謎解きを併せ持つ「屠所の羊」のA・A・フェアや「ネロ・ウルフ対FBI」のレックス・スタウト、「処刑6日前」のジョナサン・ラティマー、「シカゴ・ブルース」のフレドリック・ブラウンらの作品群を「ソフトボイルド」と呼ぶ場合もある。 「大いなる眠り」や「長いお別れ」の レイモンド・チャンドラーは、「主流文学(純文学)の中にミステリーを取り入れた」と評され、ロス・マクドナルドは、「動く標的」などに見られる複雑なプロットと、登場人物に関する心理学的な洞察が特徴で、「ハードボイルドと本格の融合」と称される場合がある。マクドナルド(本名:ケネス・ミラー)の妻であるマーガレット・ミラーは、プライ博士とサンズ警部もの長編「見えない虫」「鉄の門」ほかで夫より先に作家として成功を収めており、「これよりさき怪物領域」など心理スリラーの第一人者として活躍。晩年のアラゴン弁護士ものでは、ハードボイルドやサスペンスにユーモアの要素を加えて以前よりマイルドな作風に転じた。
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