ハワラの仕組み
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/08/02 03:07 UTC 版)
最も基本的なハワラ制度において、金銭は「ハワラダー」と呼ばれる仲介人の連絡網で送金されるが、実際にお金が(物理的に)輸送されることはない。ハワラ制度において、送金は輸送なしに行われるのである。作家のサム・ヴァクニン(英語版)(Sam Vaknin)によると、大規模なハワラ網は存在するが、ハワラダーの大半は小企業で、普段の業務の傍らにハワラに従事するにすぎないという。 例示の画像はハワラの仕組みを示している。 まず顧客(A)がハワラ仲介人(X)に接触し、最終的に受取人(B)に届く予定の金銭をXに支払う(1の赤い矢印)。このとき、Bは一般的には別の都市にいる。間違って別の人に届けられないよう、本人確認用のパスワードも渡しておく(1の青い矢印)。 XはBの所在地にいる別のハワラ仲介人(M)にパスワードや渡す金額などの詳細を伝える(2bの矢印)。AもパスワードをBに伝えておく(2aの矢印)。 BはMに接触してパスワードを伝え(3aの矢印)、Mはパスワードを確認した後、少しの手数料を引いて金銭をBに渡す(3bの矢印)。 取引の結果、MがBに渡した金額をXがMに支払う、という債務が残る。そのため、MはXの後日改めて支払うという約束を信用する必要がある。 この制度はハワラダーの間に約束手形が交換されず、完全に信用制度(英語版)に頼っている点が特徴である。この制度では債務を法的に請求できる必要がないため、法制がない場合でも運用できる。ハワラ仲介人連絡網は同じ家族、村、氏族、種族に属するといった関係に基づいており、不正は絶縁と信用を失うことで経済的に懲罰される。 送金の記録は非公式になされ、送金の結果として重なった仲介人の間の借金は記録される。そして、仲介人の間の借金を返済するとき、現金を直接支払う必要はなく、現物払いなども可能である。 仲介人は手数料を取るほか、公式の為替レートを無視して自分で定めることで利益を上げている。上記の例でいうと、一般的な送金ではAが自身の所在地の通貨でXに支払い、Mが自身の所在地の通貨でBに支払う。直接な外貨交換は行われていないので、公式の為替レートに従う必要はない。 送金にハワラを選ぶ理由は素早く便利で、手数料も銀行よりはるかに低いことだった。この利点は特に受取国が為替レートを規制している場合に顕著で、一部地域では唯一の送金手段だったり、最も信頼性の高い手段であるため援助組織も利用している場合もある。
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