ドゥー‐ワップとは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 同じ種類の言葉 > > 音楽 > スタイル > ドゥー‐ワップの意味・解説 

ドゥー‐ワップ【doo-wop】


ドゥーワップ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/06/10 23:48 UTC 版)

ドゥーワップ
Doo-wop
様式的起源 R&B[1]
文化的起源 1950年代
アメリカ合衆国
使用楽器 ヴォーカル、コーラス、ピアノ、オルガン、ギター、ウッド・ベース、ベースドラムなど
融合ジャンル
ソウル・ミュージック
関連項目
本文参照
テンプレートを表示

ドゥーワップ (Doo-wop) はポピュラー音楽における合唱のスタイルの一種。ドゥワップドゥー・ワップドゥ・ワップほかの表記もある。1950年代アメリカ合衆国で、リズム・アンド・ブルースを基に、黒人の音楽グループの中から生まれ、人気を博した[1]

概要

ドゥーワップの特徴は、メロディー(主旋律)以外は「ドゥー・ドゥー・ワッ」といった歌唱(スキャット)にあり、それらが「ドゥーワップ」の名の由来となった。黒人のハーモニー形式は、ティン・パン・アレーのAABA形式と融合して表現豊かな音楽を形成した。[2]床屋を拠点に発展した「バーバーショップ・カルテット」がよく知られている。

グループの構成は4人もしくは5人の場合が多い。ア・カペラとは異なり、ステージやレコードでは通常、「簡素な楽器の伴奏」がつく。メンバーそれぞれの担当パートはほぼ決まっており、主旋律を歌うリード・ボーカル、ハーモニーの中高音部を担当するテナー、中低音部を担当するバリトン、低音部を担当するベースに大きく分けられる。人数が少ないグループでは、ベースがいないこともある。テナーとバリトンは和音だけでなく対旋律(カウンター)や主旋律に対する掛け声(コール・アンド・レスポンス)で曲を盛り上げる役割を担う。バリトンが男性役、テナーが「女性役を演じる場合もある。ベースは「楽器のベースの音」とフレーズを模した歌い方をすることもある。また、ドゥーワップはロックンロールのルーツの一つにもなった[3]

ポピュラー音楽のコーラス・グループの一部も、ドゥーワップの歌唱スタイルを取ることもあるが、ドゥーワップという言葉は「1950年代の黒人音楽の一ジャンル」という限定的意味合いが強いため、通常はドゥ-ワップ以外のコーラス・グループには使用しない。なおア・カペラは「楽器の伴奏がない合唱」を意味する言葉であり、無伴奏のドゥーワップの形態をとる場合もある。

歴史

ドゥーワップのルーツはアメリカの黒人アフリカ系アメリカ人奴隷労働歌に遡り、黒人教会で聖歌隊が歌うゴスペル[注 1]によって基本的な形式が作られた。やがてゴスペルを基礎にジャズのメロディー、和声、歌詞、伴奏が取り入れられたものが商業音楽として1930年代に出現する。これが初期のドゥーワップで、ミルス・ブラザーズ、インク・スポッツなどが代表的グループとされる。当時はメロディーを聴かせるための甘くゆったりとした曲が主流だった。

戦後になるとドゥーワップのコーラスは、経済的にハードルの高い楽器の購入や習得を必要としないことから、都市の黒人の少年たちの間で広がり始め(いわゆるストリート文化)、1950年代半ばからは一大ブームを迎える。職業作家の手によらないシンプルなラブソングが増え、新たにテンポの速いリズムを強調したドゥーワップ・アップテンポ[注 2]の曲や、コミカルでユーモラスな曲も出てくるようになり、ロックンロールとともに若者文化の先端を担った。

アーティストの多くは黒人のグループで、一部に白人のグループや白人・黒人混合のグループもいた。商業音楽としての可能性が見出されると、音楽性をより大衆向けに変えて成功したグループも現れた。「オンリー・ユー」で知られるプラターズや、「ラストダンスは私に」などがヒットしたドリフターズは、ポップなグループである。これらのグループよりも、ファイブ・サテンズ、ザ・ムーングロウズやオリオールズ[4]などの方が、正統的なドゥーワップ・グループである。代表曲としては、ムーングロウズの「シンシアリー」、ペンギンズの「アース・エンジェル」、キャデラックスの「グロリア」、ハートビートの「ア・サウザンド・マイルズ・アウェイ」、シェップ&ザ・ライムライツの「ダディーズ・ホーム」、フラミンゴズの「アイ・オンリー・ハブ・アイズ・フォー・ユー」、ジャイブ・ファイブの「マイ・トゥルー・ストーリー」などがある。ブームによって楽曲が大量消費されたことや、のちのブリティッシュ・インヴェイジョンの影響などにより、他の多くのアメリカのポップ・ミュージックと同様にブームは1960年代初頭に終わりを迎えた。しかしドゥーワップは、1960年代モータウンに代表されるソウルミュージック隆盛のルーツとなった。

ドゥーワップの歌唱スタイルはその後のソウル/R&Bだけでなくロックポップスにも大きな影響を与えた。フランク・ザッパルー・リードジョージ・クリントンらは、熱心なドゥーワップ・ファンとして知られている。[5]日本のデュークエイセスのベース・ヴォーカリストはナチュラル・ベースであり、またキングトーンズ[注 3]やシャネルズ、ラッツ&スターはドーワップ・リバイバルに大きく貢献した。日本のムード歌謡のコーラスの一部にも、ドゥーワップの影響が見られることもある。

主なグループ

  • ザ・ムーングロウズ[6]
  • ファイブ・サテンズ[注 4]
  • スパニエルズ
  • ペンギンズ
  • ハープ・トーンズ
  • ジャイブ・ファイブ
  • ハート・ビーツ
  • シェップ&ライムライツ

ホワイト・ドゥーワップ

  • クレスツ
  • スカイ・ライナーズ
  • デュプリーズ
  • ダイヤモンズ[注 5]

日本のドゥーワップ

  • ザ・キング・トーンズ (和製ドゥーワップのオリジナルとも呼ばれ、日本にドゥーワップを広めたグループ)
  • シャネルズ /ラッツ&スター(キングトーンズの後継者的グループ)

関連項目

脚注

注釈

  1. ^ 代表的なグループには、センセーショナル・ナイチンゲイルズ(ジュリアス・チークスが在籍した)、ソウル・スターラーズらがいた
  2. ^ マーセルズの「ブルームーン」などが代表的な曲である。
  3. ^ 「グッドナイト・ベイビー」が1960年代後半にヒットしている
  4. ^ 代表曲は「イン・ザ・スティル・オブ・ザ・ナイト」
  5. ^ アメリカのグループと錯覚されやすいが、カナダのグループである。

出典

  1. ^ a b Doo wop music - Encyclopedia.com
  2. ^ Ralf von Appen, Markus Frei-Hauenschild (2015). "AABA, Refrain, Chorus, Bridge, Prechorus — Song Forms and their Historical Development". In: Samples. Online Publikationen der Gesellschaft für Popularmusikforschung/German Society for Popular Music Studies e.V., Ed. by Ralf von Appen, André Doehring and Thomas Phleps. Vol. 13, p. 6.
  3. ^ “[Roots of Rock: Doo-Wop. In Survey of American Popular Music, modified for the web by Robert Birkline.]”. 6 August 2020.閲覧。 エラー: 閲覧日が正しく記入されていません。
  4. ^ [The Orioles] Allmusic.com 2025年5月12日閲覧
  5. ^ George Clinton Ncpedia.org 2025年5月12日閲覧
  6. ^ ムーングロウズ 2021年1月7日閲覧

Books

  • 『リズム&ブルースの死』:著者:ネルソン・ジョージ(早川書房)
  • The Top 1000 Doo-Wop Songs:著者:Anthony Gribin
  • Appen, Ralf von / Frei-Hauenschild, Markus (2015). "AABA, Refrain, Chorus, Bridge, Prechorus — Song Forms and their Historical Development". In: Samples. Online Publikationen der Gesellschaft für Popularmusikforschung/German Society for Popular Music Studies e.V. Ed. by Ralf von Appen, André Doehring and Thomas Phleps. Vol. 13, p. 43-48, 61-63.
  • Baptista, Todd R (1996). Group Harmony: Behind the Rhythm and Blues. New Bedford, Massachusetts: TRB Enterprises. ISBN 0-9631722-5-5.
  • Baptista, Todd R (2000). Group Harmony: Echoes of the Rhythm and Blues Era. New Bedford, Massachusetts: TRB Enterprises. ISBN 0-9706852-0-3.
  • Cummings, Tony (1975). The Sound of Philadelphia. London: Eyre Methuen.
  • Engel, Ed (1977). White and Still All Right. Scarsdale, New York: Crackerjack Press.

外部リンク


「ドゥーワップ」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。



ドゥー‐ワップと同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

ドゥー‐ワップのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



ドゥー‐ワップのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
デジタル大辞泉デジタル大辞泉
(C)Shogakukan Inc.
株式会社 小学館
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのドゥーワップ (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS