トレースによる特徴づけ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/27 08:02 UTC 版)
「次元 (ベクトル空間)」の記事における「トレースによる特徴づけ」の解説
「跡 (線型代数学)」も参照 ベクトル空間の次元は、その恒等作用素のトレースとして特徴付けることもできる。例えば、 tr id R 2 = tr ( 1 0 0 1 ) = 1 + 1 = 2 {\displaystyle \operatorname {tr} \operatorname {id} _{\mathbb {R} ^{2}}=\operatorname {tr} ({\begin{smallmatrix}1&0\\0&1\end{smallmatrix}})=1+1=2} はトレースの定義から明らかだが、一般化には有用である。 まず、これにより自然な意味での基底をもたないがトレースが定義できると言う場合にも次元の概念を定義することができるようになる。例えば代数 A が単位射 η: K → A および余単位射 ε: A → K を持つならば、合成射 ε ∘ η: K → K は「恒等変換のトレース」に対応するスカラー(一次元空間上の線型作用素)であり、これによって抽象代数に対する次元の概念を考えることができる。実用上は、双代数について(余単位射を次元で割った ε := (1/n)tr に正規化して)この合成射が恒等変換となることを要求することがある。この場合には正規化定数が次元に対応することになる。 また、無限次元空間上の作用素のトレースを定義することもできる。この場合、(有限な)次元が存在しなくても(有限次の)トレースを定義して、「作用素の次元」の概念を考えることができる。これらは、ヒルベルト空間上の「トレースクラス作用素」やもっと一般のバナッハ空間上の核作用素の考え方に該当する。 もう少し一般化して、作用素の族のトレースを「捻られた」時限の一種と考えることもできる。これは表現論において顕著に現れる。表現論における表現の指標とは表現のトレースのことであるから、群 G 上のスカラー値函数 χ: G → K の単位元 1 ∈ G における値 χ(1)が表現の次元ということになる。これは表現によって単位元が写される先が単位行列であること、すなわち χ ( 1 G ) = tr I V = dim V {\displaystyle \chi (1_{G})={\text{tr}}\,I_{V}=\dim V} が成立することによる。そこで指標の他の値 χ(g) を「捻られた」次元と考えることができて、次元に関する主張に対して、「次元」を指標や表現で置き換えたアナロジーや一般化を得ることができる。このようなものはモンスター群のムーンシャイン現象の理論において生じる。j-不変量はモンスター群の無限次元次数つき表現の次数つき次元であるが、次元を指標に取り替えることによりモンスター群の各元に対してマッケイ=トンプソン級数が与えられる。
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