デンプンの生合成
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/10 00:10 UTC 版)
デンプンは植物のプラスチドで生合成され、特にデンプン合成が盛んでデンプンを貯蔵しているプラスチドをアミロプラストとよぶ。細胞質からプラスチドに輸送されたグルコース-1-リン酸やグルコース-6-リン酸やADP-グルコース (ADP-glucose) はプラスチド中で最終的にADP-グルコースとなり、ADP-グルコースのグルコース残基はデンプン合成酵素 (starch synthase, EC 2.4.1.21, 反応) によって伸長中のアミロースやアミロペクチンの非還元末端のグルコース残基の4位の水酸基と脱水縮合して新たなα-1,4グルコシド結合を形成して取り込まれる。プラスチド中のデンプン合成酵素はデンプン粒結合型デンプン合成酵素 (GBSS: granule-bound starch synthase) と可溶性デンプン合成酵素 (SSS: soluble starch synthase) に大別される。GBSSはアミロースの生合成に関与している。SSSによって合成途中のα-1,4グルコシド結合のグルコース残基の直鎖が、枝分かれ酵素 (branching enzyme, EC 2.4.1.18, 反応) によって一部切断され、その切断されて生じた還元末端のグルコース残基の1位の水酸基と直鎖部分の中間のグルコース残基の6位の水酸基の間でα-1,6グルコシド結合が生じる。こうして生じた分子中に存在する複数の非還元末端はSSSによって伸長するとともに枝分かれ酵素によって新たに非還元末端の側鎖が次々と形成される。余分なα-1,6グルコシド結合部分は枝切り酵素によって切断され側鎖は整理されて、アミロペクチンは合成される。つまり、アミロースとアミロペクチンの含量はGBSSとSSSの活性によって制御されている。よって、GBSSが欠損していればアミロペクチンのみを含むモチ性となり、SSSの活性が低下していると高アミロース含量となる。 GBSSの欠損変異はトウモロコシやイネにおいてはwaxy (ワキシー) として知られている劣性変異遺伝子による。被子植物の胚乳中の細胞のゲノムは重複受精によって3nとなるため、胚乳中のデンプンがアミロペクチンのみからなるモチ性となるためには、3nの全てのGBSS遺伝子がwaxy変異を持たなければならない。そのため、モチ性の品種であってもその近傍にウルチ性の品種が存在すると他家受粉の結果、キセニア現象が生じてウルチ性の胚乳を持つ種子となる場合がある。 アミロース含量が高いほど白米の胚乳は透明度が高く、低くなるほど透明度は低くなる。そのため、もち米や低アミロース米の白米は粳の白米に比べ白く濁っている。
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