スペクトルと表面
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/28 19:05 UTC 版)
「オルクス (小惑星)」の記事における「スペクトルと表面」の解説
2004年に行われたオルクスの最初の分光観測では、オルクスの可視光スペクトルが平坦(中間的な色)で、特徴がないことが示されたが、近赤外線では波長1.5~2.0 μmの範囲に中程度に強い水の吸収帯(Water absorption band)がみられた。オルクスの中間的な可視光スペクトルと強い水の吸収帯は、オルクスが他の太陽系外縁天体とは異なっているようであることを示している。同じく2004年に行われたヨーロッパ南天天文台(ESO)とジェミニ天文台が行った更なる赤外線観測の結果、オルクスの表面に水の氷とソリンのような炭素化合物の混合物が存在するという結果がもたらされた。水の氷とメタンの氷は、それぞれオルクスの表面では全体の50%と30%までしか覆うことができないとされている。表面の氷の割合は冥王星の衛星であるカロンよりも小さく、これはカロンよりも海王星の衛星トリトンに組成が類似していることを意味している。 2008年から2010年の後半にかけて行われた、より高いSN比を備えた新たな赤外線分光観測により、オルクスのスペクトルについて更なる特性が明らかになった。この分光観測で得られたオルクスのスペクトルには、波長1.65 μmの部分に表面に水の氷の結晶が存在している証拠である深い水の氷の吸収帯がみられ、また、波長2.22 μmの部分にも新たな吸収帯がみられた。後者の波長の吸収帯の起源については完全には分かっていないが、この吸収帯は水の氷に溶けているアンモニアかアンモニウム、またはメタンかエタンの氷によって発生しうる。放射輸送方程式モデリングでは、水の氷、(暗色化剤としての)ソリン、エタンの氷、およびアンモニウムイオン(NH4+)の混合物がオルクスのスペクトルの特性に最もよく一致するのに対し、水の氷、ソリン、メタンの氷、そしてアンモニアのハイドレートの混合物だとすると、それよりわずかに一致性が劣る結果が示された。一方、アンモニア水和物、ソリンおよび水の氷のみの混合物では、納得のいく一致性は得られなかった。したがってその研究結果が報告された2010年の時点では、オルクスの表面において存在が確実に識別された化合物は、水の氷とおそらく暗いソリンから成る混合物のみである。 オルクスは、質量の大きさが、太陽系外縁天体がメタンなどの揮発性物質を地表に十分保持できる閾値に位置するとされている。オルクスの反射スペクトルは、ハウメア族とは無関係な太陽系外縁天体の中では最も深い水の氷の吸収帯を示している。一方でオルクスの赤外線スペクトルは、天王星の大型氷衛星に非常によく似ている。他の太陽系外縁天体の中では、冥王星族に属している大型の太陽系外縁天体2003 AZ84と冥王星の衛星カロンがオルクスと類似した表面スペクトルを持っており、平坦で特徴のない可視スペクトルと中程度に強い水の氷の吸収帯が見られる近赤外線スペクトルを持つ。
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