スペクトルと粒子の大きさの分布
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/16 15:35 UTC 版)
「木星の環」の記事における「スペクトルと粒子の大きさの分布」の解説
ハッブル宇宙望遠鏡、ケック天文台、ガリレオ、カッシーニ らによって集められた主環のスペクトルにより、環を構成する粒子は赤みがかっており、即ちそのアルベドは長い波長で高くなることが示された。スペクトルの波長は0.5から2.5µmである。特定の化学物質に由来するスペクトルは見つかっていないが、カッシーニの観測により、0.8µmと2.2µmに吸収帯が存在する証拠が得られている。主環のスペクトルは、アドラステア とアマルテア のスペクトルと非常に類似している。 主環の性質は、0.1から10µmの径の塵が大量に含まれていると仮定すると説明可能である。これで、後方散乱と比べて前方散乱がより強いという性質が説明できる。しかし、後方散乱の強さや明るい主環の外側部分の詳細構造を説明するためには、大きな天体の存在が必要となる。 得られているデータやスペクトルを分析すると、主環を構成する粒子の大きさの分布は、冪乗則に従うという結論が導かれる。 ここで、n(r)drは、半径rとr+drの間に含まれる粒子の数であり、 A {\displaystyle A} は、環からの既知の光の合計流束に合うように選んだ正規化パラメータである。パラメータqは、r < 15 ± 0.3 µmの粒子に対して2.0 ± 0.2、r > 15 ± 0.3 µmの粒子に対してq = 5 ± 1である。mmからkmレベルの大きな天体の分布は、正確には決定できない。このモデルにおける光散乱は、径が約15µmの粒子によって支配される。 上記の冪乗則により、主環の光学的深さ τ {\displaystyle \scriptstyle \tau } の推定が可能となり、大きな天体に対しては τl = 4.7 × 10−6、塵に対しては τs = 1.3 × 10−6 と計算される。この値は、環の中の全ての粒子の横断面積は、約5,000 km2であることを示している。主環の中の粒子は、非球形をしていると予測される。塵の総質量は、107から109kg、メティスとアドラステアを除く大きな天体の総質量は、1011から1016kgと推定される。これは、粒子の最大径に依存し、最大値は、最大の直径が約1kmの時である。これらに対して、アドラステアの質量は約2×1015kg、アマルテアの質量は2×1018kg、地球の月の質量は7.4×1022kgである。 主環を構成する粒子が2種類の径のグループに分類できることは、見る方向による見え方の違いを説明し得る。塵は光を前方に散乱する傾向があり、アドラステアの軌道の外側に比較的厚い均質な環を形成するのに対し、大きな粒子は光を後方に散乱する傾向があり、メティスとアドラステアの間の内側の領域を形成する。
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