スプライソソームがスプライシングの失敗を防ぐ機構
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/20 00:37 UTC 版)
「Pre-mRNA スプライシング」の記事における「スプライソソームがスプライシングの失敗を防ぐ機構」の解説
スプライソソームが誤ったスプライシングをしないための仕組みはいくつかある。一つは、4回もの編成替えを経たうえでスプライソソームが正しく作られてから活性部位を用意することである。各段階が間違いなく完了しなければ本番の反応が起こらないようになっている。これにより、反応性の高い活性部位が基質以外を攻撃する心配はない。 スプライシングにおける失敗のリスク要因はイントロンの長大さである。例えば、人の平均的な遺伝子には7個か8個のエクソンがあり、遺伝子によっては363個ものエクソンを持つものもある。そして、エクソンは平均でたった150bpしかない。これに対し、イントロンは平均約3000bpもある。80万bpに及ぶイントロンすらある。イントロンの海からsnRNPが独力で正しいスプライス部位を見つけ出すのは至難のことだろう。 スプライス部位の識別には2種類の間違いが起きやすい。第一のエクソンスキッピング exon skipping は、5'-スプライス部位に結合した成分が直近の正しい3'-スプライス部位を見逃し、それより先の3'-スプライス部位と結合することである。この問題は成熟mRNAからエクソンを消失させてしまう。第二の隠れたスプライス部位 cryptic splice site は、塩基配列が似ている部位をスプライス部位と誤認してしまうことである。スプライス部位としてのコンセンサス配列の制限が緩いことも間違いやすさに拍車をかけている。 2つの問題を解決する方法はある。エクソンスキッピングの解決法は、遺伝子を転写 (生物学)するRNAポリメラーゼIIがスプライシングに関わる5'-スプライス部位識別成分も含んでいることである。これはポリメラーゼのC末端に便乗しており、合成されたばかりの5'-スプライス部位に出会うとmRNA前駆体へ降り立つ。そして、次に合成される3'-スプライス部位(に結合する別の成分)を待ち構える。こうして、3'-スプライス部位は下流の競合相手が現れるよりも先に正しい5'-スプライス部位と相互作用することができる。一方、隠れたスプライス部位をスプライシングしないために、SRタンパク質がエクソンスプライシングエンハンサー exonic splicing enhancer:ESEに結合する。SRタンパク質はスプライス装置と直接相互作用し、近くのスプライス部位に召集する。具体的にはU2AFタンパクを3'-スプライス部位に、U1 snRNPを5'-スプライス部位にあてがう。したがって装置は、エクソンから離れた隠れたスプライス部位よりも、近くにある正しいスプライス部位をより大きな確実さで選ぶ。
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