スピードグルー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/13 06:14 UTC 版)
ラバーとラケットを接着するための有機溶剤性接着剤の一つ。一般の接着剤よりも有機溶剤を多く含んでおり、ラバーに塗るとスポンジの中で揮発して、スポンジが膨張する。この状態でラバーをラケットに貼ると、スポンジの膨張分だけシート面が横に引っ張られるため、常にゴムに負荷がかかった状態となる。反発力と摩擦力が高くなり、金属音と呼ばれる高い打球音になる。スポンジが柔らかくなるため、シートが少し硬くなっても全体としては柔らかくなる。ただし、常にゴムに負荷がかかっているため、一般の接着剤を使用した時よりもラバーの劣化が速い。 グルー効果を最初に発見したのは、ハンガリーのティボル・クランパと言われている。日本では、1980年前半に元日本チャンピオンだった渡辺武弘がベルギー製のグルーを持ち帰って使用したのが最初であった。その後、スピードグルーが開発されて以降は世界的にグルーは普及し、主に攻撃型の選手に広く普及していった。 それを問題視したのが当時国際卓球連盟の会長を務めていた荻村伊智朗であった。荻村は、卓球の普及という観点でのボールスピードの減速、スポーツ精神という観点での用具のドーピングは好ましくないこと、スピードグルーにトルエンが含まれているものが多く人体に有害で、シンナー遊びと同様の卓球以外の不適切な用途に使用されて社会問題化した歴史があったことなどから、スピードグルーの禁止を提案したが、荻村の死去により一旦は白紙の状態となった。 これらの諸問題から、スピードグルーのトルエン規制に乗り出したことで、トルエンに代わってヘプタンが主成分となり弾性と回転量が低下。弾性と回転量低下を補うために、スピードグルーの重ね塗りや蒸らしといった方法が確立されて、イタチごっこの状態が長らく続いたのである。 しかし、スピードグルーは卓球用途での使用時においてもアナフィラキシーショックによる事故があり、これら健康上の問題が議論されたことや、揮発性が高く輸送の面においても危険性を伴っていたため、スピードグルーの使用禁止に至っている。スピードグルーの使用禁止は当初2007年9月1日に施行される予定であったが、翌年に北京五輪を控えたこともあり、最終的には北京五輪終了後の2008年9月1日に施行されることとなった。
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