スイスの移民政策
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/13 01:50 UTC 版)
EUとスイスとの間で取り決められた人的資本の自由を認める条約は2002年に施行され、EU加盟国の国籍を有する者は、居住や仕事の目的でスイスに自由に出入りできるようになった。 しかし、それと同時に素行に問題のある外国人の流入も増えることになった。外国人犯罪の高まりに対処するため、スイス政府は外国人の国外追放についての基準を2010年から導入した。その法律によれば、強盗や薬物など犯罪が確定した外国人は国外追放されることになる。実際には、その法律で国外追放されたのは政治的亡命者で、それらのなかには犯罪をしていない者も含まれていたことから、その法律の効果は議論の的になった。スイス政府が亡命者の本国への送還費用(およそ一人当たり2100ドル)を出したこともあり、それら亡命者の約4割は自発的に国外退去勧告に応じた。ビザの有効期限以上に滞在している者や現地の住民と結婚して居住権を獲得した不法移民もいたが、居住権を獲得後に離婚して滞在する者もいた。 スイスは、EU諸国からの移民の数を制限する是非についての国民投票を2014年に行い、移民規制強化への賛成が過半数を占めた。スイス国民党(SVP)が指摘するように、EU諸国からスイスへの移民の数は毎年8万人にのぼり、この数は当初2007年に見積もられていた数の10倍であった。移民超過の結果、教育システムや交通、公的医療システムに負荷をかける事態になっている。健康保健・年金など移民への社会保障のためのコストを誰が負担するかについての議論がある。 また、スイス国内の労働者の賃金が移民労働者の低賃金によって脅かされる状態になっている。スイス国民党代表のトニー・ブルンナーは、この国民投票の結果はスイスの移民政策のターニングポイントだとする声明を出した。「スイス有権者は、移民の現実的問題についてスイス政府よりもよく理解している」とブルンナーは述べた。スイス連邦参事会員(司法・警察担当)のシモネッタ・ソマルーガは、今回の投票結果は異常な人口増加に対するスイス有権者の不安を反映するものだと述べた。 「底辺への競争」も参照
※この「スイスの移民政策」の解説は、「移民政策」の解説の一部です。
「スイスの移民政策」を含む「移民政策」の記事については、「移民政策」の概要を参照ください。
- スイスの移民政策のページへのリンク